第71話
~力耶side~
最近、赤旗の動きが大人しくなったように感じていた。
悪い噂ばかり絶えなかったのに、一週間ほど前から赤旗に関する噂が途絶えがちになっていた。
それは、集会のときにすでにチームのメンバーには知らせていたが、今までとかわらず警戒するようにと伝えていた。
リーダーである大志が入院中の今、こちらとしてもあまり好き勝手に動き回ることはできない。
だから、赤旗が大人しいことはいいことなのだが……。
急に静かになったことに、俺は違和感を抱いていた。
なにか、裏で企んでいるのではないか?
そう考えているのだが、赤旗から直接情報を流してくれていたカナタがいなくなった今、それを探ることは困難だった。
授業を終え、一旦帰宅した俺は珍しく親父が昼間から家にいることに気が付いた。
集会所にもなっているライブハウスの経営をしている親父。
昼間は、会場を使いたがっているイベント主催者とのミーティングなどがあるハズだ。
「ただいま。珍しいな、こんな時間にいるなんて」
ソファに寝転ぶ親父にそう言うと、顔だけこちらへ向けてきた。
その顔は少し赤らんでいる。
昼間から酒を飲んだのかと思ったけれど、テーブルの上に置かれている風邪薬に気が付いた。
「親父、熱でもあるのか?」
「あぁ。ちょっとな」
「ちゃんと寝室で寝ろよ」
「もう少ししたら、会場の見回りだ。今日は平日だけれど朝の11時から15時までイベントをやっていたからな」
平日の昼間にイベント?
俺は首をかしげる。
あの会場ではライブだけでなく、フリーマーケットや映画上映など、さまざまな催しができるようになっている。
けれど、そのどれもが土日や祝日に開催される。
集客を考えれば、平日行うことはめったにない。
「見回りは俺が行ってくるよ。親父は寝てろ」
「そうか? 悪いな……」
「気にすんな」
俺はそう声をかけ、すぐに着替えをすませると車庫にしまってあるバイクにまたがった。
時間を考えると、すでにイベントは終わっている。
ライブハウスにつくころには片づけも終わっているかもしれない。
あとは俺が見回りをして、施錠をして帰れば問題ない。
「よし、じゃぁ行ってくるか」
ヘルメットをかぶり、エンジンをかけた。
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