第66話
~千沙side~
キョウに冷たくあしらわれたあたしは、恋羽と2人でとぼとぼと帰路を歩いていた。
「やっぱり、無理なのかな……」
恋羽が、呟く。
「うん……。行けたとしても、またあたしの前では本当の事を言わない可能性も、あるしね」
あたしはそう答え、軽く笑った。
だけど、諦めたワケではなかった。
ここ最近の大志たちの行動を見ていると、赤旗というグループに注目していることは理解できていたから。
大志が、カナタのようにチームの情報を流してもらうなんてことも、今までなかった。
チーム内での裏切り行為を嫌っていたから、他のチームの人間をこっそり味方につけるようなやり方も、していなかったのだ。
なのに。
赤旗のメンバーから情報をもらうようになった。
それはきっと、赤旗というチームがなにか重大なことを計画しているからだろうと、あたしは感じていた。
大志にも会えない、集会にも行けないのであれば、直接赤旗に行くしかない。
「あたし、行ってみようと思うんだけれど」
「え?」
「赤旗に、会ってこようと思う」
「千沙、本気!?」
恋羽が、目を見開いて驚いている。
「うん。本気だよ」
このまま、あたしだけ大志が刺された理由も知らずにいるなんて、そんなの絶対に嫌だ。
今回の事であたしにも責任があるのなら、ちゃんとすべてを把握して、納得したい。
「でも、赤旗って最近大志君たちがすごく警戒しているじゃない? 今まで名前すら知られていなかったのに、急激に成長しているって……」
「そうだよ。でも、だからって、逃げてられないじゃん」
「そうかもしれないけれど……。千沙、1人で行く気?」
「うん。誰もあたしに真相を教えてはくれない。だったら、1人で行動するしかないと思うの」
「そんな……無茶苦茶だよ」
恋羽はそう言い、困ったように表情をゆがめた。
無茶苦茶なのは、あたしだってわかってる。
目の前で大志が刺されたんだもん。
「もし、あたしに何かあっても、大志には秘密にしててね」
「え? ちょっと、千沙!」
呼びとめる恋羽を突き放すように、あたしは走りだしたのだった。
☆☆☆
恋羽と別れたあたしは、とりあえず北区へ向かって歩き始めた。
東は今津と松原のチームがあり、西には浜中のチームがある。
ということは、赤旗のチームは北区か南区になる。
もしくは、その両方。
後者だった場合、東と西は赤旗に囲まれている状態になるワケだから、大志たちが余計に警戒するのも、よくわかる。
あたしは北区の入り口までバスで移動し、大きなビルの前で下りた。
景色は他の街と変わらない。
街ゆく人たちの表情も明るく、賑やかだ。
あたしも、北には何度も遊びに来た事がある。
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