第61話
こんな状況だけれど、あたしは強に対して腹正しさを覚えた。
どれだけ女遊びをしているのよ!!
「ねぇ、よかったらうちに来ない?」
「え?」
あたしの言葉に、驚いたような表情を浮かべる美少女。
「あたし、今1人じゃいたくないんだ……」
刺された大志の事を思い浮かべうと、気が狂いそうになる。
それに、この子だって強のことを誰かに聞いてほしいんじゃないだろうか?
そんな気がしたから。
それでも躊躇している美少女に、あたしはニッコリと笑いかけた。
「あたしと強のこと……聞いてくれますか?」
「もちろん」
美少女の言葉に、あたしは大きく頷いたのだった。
☆☆☆
それから数十分後。
自宅へ招いて紅茶を入れると、すぐにあたしたちは打ち解けていた。
彼女の名前は富沢桃花(トミザワ モモカ)ちゃんと言って、あたしと同級生だった。
強とは1年前、東区の花火大会で出会ったそうだ。
「ナンパだったの?」
あたしが聞くと、桃花ちゃんは少し頬を染めて頷いた。
やっぱり、ナンパだったんだ、
強のやつ、女の子を見ると節操がないんだから!
「その時、お互いに友達も一緒にいたからいいかなって思って、遊んだんだよね」
「そっか。その時のこと、後悔しているの?」
その言葉に、桃花ちゃんは横に首をふった。
「どんな形でも強に出会えてよかったと思っているの。でも、たまに辛くなっちゃって……」
そう言って、うつむく。
あたしは、桃花ちゃんにかける言葉を探して、空中に視線を漂わせた。
どうしよう。
また、何も言葉がでてこない。
すると、そんなあたしに気がついたのか、桃花ちゃんがこちらを向いて「そんなに、気にしないで?」と、微笑んできた。
ダメだなあたし、桃花ちゃんに気を使わせちゃって……。
「ねぇ、千沙ちゃんは好きな人いる?」
突然そう聞かれ、あたしは思わず顔が熱くなった。
「あ、いるんだぁ」
「い……いる……けど……」
ニコニコとうれしそうに笑う桃花ちゃん。
あたしの脳裏には大志の姿があった。
やっぱりあたし、大志が好きだ。
「千沙ちゃんの好きな人って、誰?」
「え? えっとね……」
い、言ってもいいよね?
桃花ちゃん、いい子そうだし。
大志にもあったことがあるだろうし。
「あ、あたしの好きな人はね……大志、なんだ」
それを口にするだけで、ドキドキする。
恋ってすごいね。
「やっぱり、大志君なんだぁ」
「え? わかっていたの!?」
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