第47話
~大志side~
今日の集会に、俺は千沙を連れて行くことにした。
理由は、この前から千沙は妙に元気がなかったから。
それが、もしかしたら、俺が千沙を除け者にしているのが原因かな……と、思ったりしたからだ。
空き教室でためしに俺が『次の集会に参加するか?』と聞いてみれば、千沙は一気に元気を取り戻した。
チームのことを色々と嗅ぎ回されるのもめんどくさいし、手の内に入れておいた方が、千沙も安全かもしれない。
なにより、30分で帰る約束をしているから集会の本題を聞かれる心配がなかった。
俺は千沙がバイクの後ろにまたがったことを確認すると、エンジンをかけた。
背中に伝わってくる千沙の体温。
ウエストに回されている、色白で華奢な腕。
少しつつけば壊れてしまいそうなほど、繊細な気がした。
「まるでガラス細工だな」
そうつぶやくと「何か言った?」と、千沙が後ろから聞いてきた。
「別に。振り落とされんなよ」
千沙が落ちてしまうような運転するワケがなかったが、俺はそう声をかけ、走りだしたのだった。
☆☆☆
力耶のライブハウスに到着すると、この前の集会のときと同様に駐車場はいっぱいで、俺は路肩にバイクを停車させた。
「千沙、着いたぞ」
「うん」
俺の腰から、千沙の腕が離れる。
その瞬間、温もりが消える喪失感を少しだけ覚えた。
「今日は天気が良くてよかったね」
「そうだな。バイクも、極力濡らしたくない」
俺はそう答えながらバイクを降りて、千沙からヘルメットを受け取った。
2人で会場へと歩いていると、強と見慣れない女が会場へ向かっているのが目に入った。
あいつ。
また女を変えたな。
少し距離のある場所から見ただけでも、それははっきりとわかった。
この前の集会でいた女は大人しそうな大人な女だったが、今日連れている女は金髪にくるくるパーマだ。
服装も、ビビットカラーの上下で、かなり派手だ。
「あの人……」
千沙も、強の女に気が付いたのか、眉間にシワをよせた。
よういえば、この前の集会のとき、強の女と一緒に帰らせたんだっけな。
だから、今日別の女と歩いていることに違和感を抱いたのだろう。
「強は、昔からそういう奴なんだ」
「どうして、1人に決めないの?」
「さぁな。モテてモテて、感覚がバカになったんじゃないか?」
俺はそう返事をして、千沙の手を握った。
こいつまで強にとられることはないと思うが、念のため。
すると、千沙は驚いたように俺を見て、そして頬を赤くした。
は……?
なんだよ、その反応は。
今まで見たことのない千沙の反応に、俺は動揺する。
どれだけ近くにいたって、スキンシップをしたって、千沙のこんな反応は見たことがなかった。
「千沙、今日は気分でも悪いのか?」
「え? ううん大丈夫」
「本当か? 無理するなよ」
「うん。……ありがとう、大志」
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