第36話
誰が、こんなひどいことを……。
倒れているのはそんなにひ弱そうな男じゃないから、1対1じゃこんなことにはならないだろう。
だとしたら、集団でこいつ1人を狙ったに違いなかった。
それは、俺の大嫌いなやり方だ。
ふつふつと沸いてくる怒りを抑えるため、クッと奥歯をかみしめる。
「体、起こせるか?」
「あぁ……」
手をかしてやると、どうにか体を起こすことができた。
相手は足がひどく腫れていて、もしかしたら骨折しているのかもしれなかった。
「バイクはあそこだ。頑張れるか?」
「あぁ……すまないな……」
一歩一歩、ゆっくりと進んでいく。
「お前、ここらへんで見ない顔だな。今津や浜中のチームには入ってないんだろ?」
もし、チームの人間だったとしたら、こんなにのんびりしていられない。
すぐに知らせる必要があった。
「俺は……赤旗のメンバーだ……」
その言葉に、俺は思わず立ち止まって男をマジマジと見つめていた。
「赤旗の……?」
なんてことだ。
あんなに注意していた赤旗が、こんな場所まで来ているなんて……。
唖然としていると、男は軽く首をふり「安心……しろ」と言ってきた。
「どういうことだ?」
「俺は……赤旗に逆らって、こうなっただけだ……。
たまり場でボコボコにされて……それから、ここに捨てられた。
東にでも捨てておけば……赤旗の鬼畜さをアピールできるって……」
そう言って、ハハッと笑う。
そんなの、笑う場面じゃないだろ。
俺は再びゆっくりと歩き出した。
「逆らった理由は?」
「やり方が……俺の意に反するんだ……」
「ドラッグや詐欺か」
「あぁ……。俺は、そんなことがやりたいんじゃない……」
自分の意思を貫こうとしただけで、どうしてここまでやられるんだ?
そのやり方が、俺には理解できなかった。
ましてや、赤旗のドラッグや詐欺といったやり方は、すでに度を越している。
反乱をおこす連中がいたって、不思議じゃない。
「お前意外に、赤旗のやり方に納得してない連中だっているんじゃないのか?」
「あぁ……いるよ。でも、みんな表だっては言えないんだ……」
「どうしてだ? あまりチームが大きくなりすぎて、仲間割れが怖いからか?」
「そんなんじゃねぇよ……」
「なら、どうしてだ?」
「それは……言えねぇ……今度こそ、殺されちまう……」
恐怖で顔を青く染めて、男は震えながらそう言ったのだった。
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