完璧な美少女と素
kq1
第1話 自己紹介
俺は風が好きだ。
青い晴れの日、太陽の暑さを感じさせない程度に強く吹く、風が。春。俺はこの心地よい風には春のイメージがあった。また新たな幕開けを告げる季節というイメージもあり、爽快感が増していたのかもしれない。俺自身、虫は苦手なので、春自体は好きではない。
ただ、この風だけはとても好きだった。
「いい風だねー」
と誰かが言った。河川敷で横になっていたので、体を起こしその方向に視線を飛ばすと、そこには見慣れないとても可愛いらしい少女がいた。
「おはよ〜」
学校に来るなり、とても騒がしい声が聞こえてきた。
「同じクラスだねー」
こいつは、同じ中学でそこそこ仲が良かった沢北 夏紀(さわきた なつき)だ。別に嫌いというわけではない。ただ好きでもない、好きでもない。二回言っておこう。
「ん、そだなー」
「なにその興味なさそうな感じ」
「実際どうでもいいしな」
「あーあ、そういうことばっか言ってるからモテないんですー」
「別にモテたいわけでもないし、彼女が欲しいとも思わない」
「せっかく高校生になったんだから、彼女作ればいいのに、顔は悪くはないんだから」
「大きなお世話だ。そもそも異性を可愛いとおもえない」
「さいですか。でもいつか彼女ほしーってなるからね」
「はいはい」
はぁ、高校生になったからって彼女ってあいつはバカか。別に高校生になったからってかわいいと思える異性ができ、恋をするとは限らない。見た感じ、クラスの女子たちも、悪くはないが可愛いとは思えなかった。
(強いて言うなら、どこの誰だか知らないがあの河川敷であった子は、普通に可愛かったな)
「はい、じゃー先生から自己紹介するぞー。先生は平石 直樹(ひらいし なおき)って名前だ。ひらちゃんって呼んでくれてもかまわんぞ」
(びみょうに滑ってるな...)
「じゃあ、出席番号順に自己紹介していけー」
自己紹介か、何話そ。
「次、はやくしろー」
おっと、もう俺の番が来たのか。無難に済ませておこう。
「えー、石川 快斗(いしかわ かいと)っていいます。好きなものは、自分が可愛いって思える女の子です。嫌いなものは子供のいうことに耳を傾けない大人、もしくはピーマンです。あ、安心しろ、このクラスで可愛いと思える女子はいなかったから、なにもしない」
「・・・」
あれ、もしかして僕なにかしちゃいました?
「ぶっはは、石川、おまえ...高校1年の自己紹介で、なんかすごいな。ま、先生は面白ければなんでもいいんだが。はい、次」
「えーと僕は...」
その後も自己紹介が進んでいくが、なんだこの空気は。自己紹介って、自分の名前と好きなもの、嫌いなものを言うんじゃないの?僕、小学校のときそう教わったよ。
なにか気まずい空気だったが、ひとまず自己紹介は終わった。
「快斗、あれなにw」
「なにって自己紹介しただけなんだが」
「普通は、はぁ、なんかもうあんたはそれでいいと思うよ」
「そうか、ところでだ」
「なに?」
「友達ってどうやって作るの?」
「そんなの話しかけられたりしてる内にって、あ、あの自己紹介した後じゃ話しかけられないか」
「そんなひどかったのか?」
「いや、、、いんぱくとがすごかったです」
「まぁ、インパクトは大事だからな」
「はぁー、ま、とりあえず大和田とかのグループ混ざれば?」
「大和田って、あいつらか。なんか隠キャっぽくね?」
「人を見かけで判断するのはよくない、けど確かにあれは陰キャですな」
「だろ、流石に高校最初の友達陰キャのオワタくんはちょっとな、」
「大和田(おおわだ)くんでしょ。勝手に名前変えない!うーん、じゃ、あの青山くんたちのところは?」
「なんだ、あの陽キャの集まりは、とてもじゃないが付き合っていける自信が、」
「陰キャだ陽キャだめんどくさいなー。もう知らない、自分で頑張って」
「ちょっと、まってくれ、」
(まってくれって)
ま、でも友達なんてそんなに焦らなくてもいつかできるでしょ。今はせっかく引っ越して一人暮らししてるんだから、家の周りを見て回ったりしよー。
学校は入学式だけだったので、自己紹介が終わったらすぐに帰れた。もちろん一人で、
よし、ここが今日から住むマンションか。なかなか綺麗だし、治安も良さそうだ。ざっと周りを見て歩いていたら、すっかり夜になってしまった。
今日の朝と昼はお母さんたちが昨日残って作ってくれたのがあったけど、夜ご飯はなににしよーかな?別に料理ができなくはないが、うまくもない。あ、これ美味いと上手いをかけてるって、、、これもうまくもないや。
テキトーにスーパーで済ませようかなと思い、スーパーへ向かった。行きは迷い迷いだったが、すぐに土地を把握し、帰りは迷わず帰れた。
(なんか味気ねーな)
一人暮らしをしてみて思うのがやはり、家事や料理など、人の暖かさが恋しい。せめて可愛い彼女がいてくれたら、、、って夏希が言ってたみたいなことが頭をよぎったが、すぐにその考えは消えた。
完璧な美少女と素 kq1 @kq1
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