第31話 ~栞side~ 新しい教室

 中等部三年の新学期から、わたしは特別進学コースから進学コースに移った。

 進学コースのクラスに入ったことはなかったし、入ることもないと思っていた。

 ここのクラスの人たちは、決して頭が悪いというわけじゃない。

 むしろ、この辺りの公立中学に行けばトップクラスでいられるほどの学力をもっている。

 それでも、特別進学コースの人たちにはかなわない。

 それを中学受験をしたとき、12歳の心に嫌というほど思い知らされてきた人たちだ。

 特別進学コースから『ドロップアウト』した人たちを受け入れられないというのは、そういったことがあるんだと思う。


「新学期からクラスメイトになる相楽さんです。

 みんな仲良くしてあげてください」

 教壇に立ったわたしを誰も見ていない。

 特別進学コースで見えない存在になったわたしは、この進学コースでは見てはいけない存在に自動的にジョブチェンジしたらしい。

「相楽栞です。

 よろしくお願いします……」

 その声は、きっと誰にも届いていない。


「じゃあ、窓側の一番後ろの席に座ってね」

 先生もわたしに目を合わせずにいった。

 きっと、『ドロップアウト』した生徒がクラスに入ってくるのが厄介なんだと思う。


 私の進学コースでの生活が始まった。

 高校卒業までの4年間。

 それは外国の受刑者の懲役400年というような、どうにもならない長さのように感じられた。

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