第2話 神楽坂芽亜という少女

「先輩、退屈そうな顔してますね」

「……?」


 急にそんな声を掛けられた私は返事ができなかった。何だこの子は。先輩と呼んできたってことはあらかた新入生かしら。明るい太陽のようなオレンジ色の髪の毛に髪の毛と同じ瞳を持つ少女。背丈は私より少し小さいくらいかしら?少女はタレ目がちの瞳で私が落書きしていたノートを覗き込んできた。急いで覆いかぶさって隠したけど…。うん、ダメだわこの満面の笑みは…。


「あなた誰?私はこう見えて一人の時間を楽しんでたんだけど?」


 少し突っぱねた言い方だったかな。でも仕方ないじゃない。こんなの誰だって警戒するでしょ?


「私は神楽坂芽亜です!いや〜入学して早々上級生にとんでもない美人がいるって聞きまして〜?部活もやる気なかったのでブラブラと図書室に来たらまさかその渦中の人が居るんですもん。そりゃ話しかけますよ〜」

「そ、そんな人を珍獣みたいに…」

「でも実際先輩に対しての皆の印象ってそれに近くないですか?珍獣というより女神とかのそれに近い気がしますけど」

「はぁ…。まぁいいわ、それで?あなたはどうするの?私の写真を撮って唯一の憩いの場所も無くすつもり?」


 私が半ば諦めて問いかけるとこの少女は笑って首を横に振った。


「そんな野暮なことしませんよ〜。正直私は先輩のそういうキラキラした部分には興味無いので!」

「それなら今すぐ回れ右して帰りなさい?帰り道は気をつけてね」

「そんな素っ気ない!」


 大袈裟にショックを受けたリアクションをとったこの子は私の対面に腰を下ろした。

 ……帰りなさいよぉ。


「私は先輩の今のそういう表情に興味があるんです」

「……へ?」


 私の顔を覗き込むように言ってくるこの子の瞳はどこか見透かしているような感じがする。

 そしてこの子は私の目を真っ直ぐ見ながら言ってきた。


「先輩、私と友達になってくれませんか?」

「………………別にいいけど」


 私自信驚きだった。頭で考えるより先に口がそう答えていたのだもの。私の本性はやっぱり友達を望んでいたのかな…。


「やったぁ!」

「言っておくけど私と友達になったって後悔するわよ?」

「後悔なんてするはずないじゃないですか」


 この子は面と向かって恥ずかしげもなく言い放つ。


「だってそういう面も含めて気になってるんですから!」

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