魔剣争奪戦編

第35話 プロローグ~『才能』と『運』~

 この世は『才能』と『運』で全てが決まる。

 それがわかりやすいのが冒険者という職業だ。


 才能の無い者は弱者になる。

 才能の有る者は強者になる。

 運の無い者は死ぬ。

 運の有る者は生き延びる。


 才能があれば強くなる。運が無ければ死ぬ。

 至極単純明快な世界だ。


 でも、この世界にはたくさんの冒険者が存在している。

 貴重な薬草の採取もあれば、モンスターと戦うこともある危険な仕事。

 にもかかわらず、冒険者になる者は後を絶たなかった。


 なぜ?

 どうして危険とわかっているのにリスクを冒すの?


 金が欲しいから?

 名声が欲しいから?

 女を侍らせたいから?

 力を鼓舞したいから?


 答えは全てだ。

 だけど全て違うとも言える。

 答えなんて有るようで無いのだ。

 金が欲しい奴もいれば、名声が欲しい者もいる。

 女を求める者がいるし、力を知らしめたい者もいる。


 当たり前だろ?

 だって人間って何人いると思ってるんだい。

 70億人全員が同じ理由なわけないだろ?


 おっと話がそれたね。

 要するに人間が何かをするのに、他人と同じ理由はいらないってことさ。


 金が欲しいから。

 名声が欲しいから。

 女を侍らせたいから。

 力を鼓舞したいから。


 これ以外でも理由なんて何でもいい。

 やりたいと思ったから。それが理由だ。


 ただ……現実ってのは残酷でね。

 どんな理由で始めても、大層な夢を抱いても、それらをブッ壊してしまうような格上の奴が存在する。

 自分の目指すものに、自分より遥か高みを行ってる奴。


 ――『天才』――


 才能があって運もあった自分。

 そんな時に現れる、自分よりも才能と運に恵まれた奴。


 自分が限界という壁にぶつかったとき、いとも簡単にその壁を越えていく奴。


 ソイツに会うと思うんだ。

 モノが違うって。


 冒険者にもいるんだよ。

 そんな度を超えた天才。


 しかも、6人もいるんだって。


 そいつらの冒険者ランクが凄い。

 一番上、『Sランク』。


 世界にはこいつら6人しかSランクはいないんだよ?


 こんな天才がいたんじゃ冒険者なんてやってらんない。とか思うくらい強いらしいよ?


 いやぁ、ホントに……



 天才ってのは、嫌だねぇ……

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