第4話 タローの実力(1)
タローが帰ってきた。
血まみれで。
キング・オーガの首を右手に持って。
左手にキングオーガが持つ武器<キング・オーガの棍棒>を手に持って。
するめをかじって。
背中にお爺さんを担いで。
いや、待て。
情報量が多くてついていけない。
少し冷静になり、ドラムスは深呼吸した後、タローに訊いた。
「よし、タロー。順番に訊いていくぞ?」
「へい?」
「まず、キング・オーガは倒したのか?」
ドラムスが訊くと、タローは少し考えたあとに「あぁ……」と理解した。
右手を前に出し「これでいいの?」と言う。
ドラムスは休憩中だったギルド職員たちを緊急で集めて鑑定を行った。
その結果、確かにこのキング・オーガはタローが討伐したものだと判明する。
その結果に、ドラムス含めその場にいる冒険者やギルド職員も驚きを隠せない。
「今日冒険者になったばっかだろ?」
「それもたった2時間程度で」
「信じらんない……」
ひそひそと言いあう者たちに、ドラムスは何も言わない。
いつもなら
結果が判明し、ドラムスは次々に質問をする。
「じゃあ次だが、その武器はこのキング・オーガを倒してドロップしたってことでいいか?」
「うん」
「よし。なら、その血は戦闘時のケガか?」
「戦った時の
「それはつまり、お前はノーダメージでキング・オーガを討伐したのか!?」
「まぁ…そうだけど」
…なんて奴だ、とドラムスは目を見開く。
他の者たちも驚いて声も出ない。
現役のAランク冒険者でも、多少は
それをいとも簡単に討伐したとなれば、1年以上やってる冒険者たちにとってはたまったものではない。
「ふぅ……奇想天外な奴だとは思ったが、それは実力の方もだったか……」
「……//」あんまり褒められてないタローは少し照れた。
大体訊きたいことは訊いたので、タローにはゆっくりと休んでもらいたい。
しかし、ドラムスには、というよりこの場にいる全員が知りたいことはまだあった。
「よし、最後だタロー」
「ん?」
ドラムスは恐る恐る口を開いた。
「その爺さんは……誰なんだ?」
「………………………!?」
お爺さんの話をすると、タローは普段死んでいる目を見開き、自分の背中を見た。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
お爺さんと目を合わせたまま、タローは動かなくなった。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
1分ほどして、ゆっくりこちらを向くと、ようやく口を開いた。
「忘れてたわ」
「お爺さん背負ってるの忘れるってなに!?」
ドラムスのツッコミだけがその場に響いた。
***
タローはギルドにあるシャワー室に案内され、汚れを落とす。
もう一度詳しく話を訊きたいと思ったドラムスは、ギルドマスターである自分の部屋で1対1で話をすることにした。
しばらくすると、ガチャリとドアが開いた。
もちろん入って来たのはタローである。
もちろんノックはしていない。
「スッキリ~♪」とご機嫌で部屋に入るタロー。
服はギルドの人に貸してもらったようだ。
そして何故かまだ謎のお爺さんはタローに背負われている。
もはや霊に憑かれている、もしくはタローがスタンド使いなのではとドラムスは思ってきていた。
だが、タローにツッコミだしたら切りがなくなりそうなのでスルーした。
(絶対に、ツッコミはしない。絶対だ!)
「タロー」と早速本題に入るドラムス。
「ほいほい」
「今度は一から聴かせてくれ。どうやってキング・オーガを倒したのか、そしてその爺さんは誰なのかをな」
「……」
タローはドラムスの質問に目をつぶった。
そしてゆっくり目を開けると、語りだした。
「昔話は嫌いなんだがな……」
「昔話?」
やっぱり過去に何かあるのか? とドラムスはゴクリと唾を飲み込む。
「あれは……俺が、ギルドを出てからのことだ」
「お前、よく2時間前のこと昔って言えたな!!」
やっぱりツッコんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます