命の天秤

ぽんぽこ@書籍発売中!!

生きる義務、死ぬ義務。

 毎日、生きる理由と死ぬ理由を探している。それらを、一つずつ天秤の右と左に置いていく。


 今のところ、右が下に傾いている。

 だから辛うじて今日も私は生きている。


 ……左が上に行った時、私がどうなるかは分からない。

 だから私はいつも、なるべく重い生きる理由を見つけては乗せるようにしている。



 いつからだろうか。

 私は義務という鎖に引っ張られる、誰かのペットになっていた。


 自主性や判断力に著しく欠けているのだ。

 これは親の教育の仕方で子どもがなることがあるらしい。


 たしかに、親は厳しかった。


 日常的にああしなさい、コレは駄目、どうしてやらないの。

 まぁ私が不真面目だったことが主な原因ではあるのだが。


 結果、私は生きる術を失ったロボットになった。

 命令をインプットされなければ動けない。


 子どもの頃はまだいい。

 親にしろ教師にしろ命令を与えてくれるのだから。


 だが、そのまま大人になったものだから、さぁ困った。

 自分で生活する方法を考えなければならない。


 こうして、私は私を義務感という命令を自分に課して動くようになった。




 朝は起きなくてはならない。

 ご飯を食べなければならない。

 仕事をしなくてはならない。

 上司の言うことはよく聞かなければならない。

 常に真面目で丁寧に、人を傷付けることなく、言葉に注意して……



 命令は次第に増えていく。

 あまり出来の良いとは言えない脳は処理が追いつかなくなっていく。



 とどのつまり、私は社会には適合出来なかったのだろう。

 いや、むしろ生物として欠陥品かもしれない。


 人間とは他の生き物と違って、生きる理由があるものだ。

 私はそれを毎日探して義務という命令を自分に課さなければ生きてはいけない。



 私は、私の、ペットだ。





 いったい、誰が何のための義務なのか?

 その答えは敢えて探さない。


 きっとそれは私を殺す理由になるから。



 少しずつ心と体を摩耗させながら、私は今日も自分に餌をやり、親の代わりにああしなさいと命令を与え、いやいや従っていく。


 それが私を生かしている理由だ。

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