僕は学校が嫌……え?
つまらない。
学校にいるときはただただつまらない。
この高校はスマホの使用が駄目だから、机からスマホを出して大々的になんて使えないし、でも使いたいから周りに気を使いながら使うけど、思いのほか疲れるし集中できない。
友達が一切いない僕にとっては地獄のような場所である。
高校なんて行きたくないし、なんなら一生遊んで暮らしたい。
自分の好きなことだけをして生きていたい、そんなありえない人生を願ってしまうくらいにはこの時間は好きではない。
ホームシックだ。家に帰りたい。
今日も今日とて周囲に意識を置いて暇をつぶし、しかしすぐに学校嫌い病が発病する。
爆発しないかな、もういっそ。
そうしたら休校になって家でのんびりとしていられるのに。
でもそうならないのは、そうなってしまったら世も世紀末になっちゃうしなぁ。そんな世界で生きていたいとは思わない。僕は北斗神拳なんて伝承していないただの一般人だからな。
ん、なんだろう。
そんな僕のおかしな考えが読まれたのか、はたまた先ほどまでチラッと見ていたのがバレたのか、この学校の美少女である桃山栞奈が一瞬こちらを見たような気がした。
少しだけびくりとするが、それを隠して知らんぷりをする。
やばい。もし見ていたなんてことがバレたら『なにあいつ、きもくね?』という話題で桃山のグループが盛り上がってしまう。
滅茶苦茶恥ずかしいしなんか泣ける。
大丈夫大丈夫。バレていないさ。そんなへまを僕がするわけない、と謎の自身をもって自分を鼓舞してみるが、心の奥の僕がちょっと無理があるよとジト目で見てくる。そんな目をするな。
まぁこんな現実逃避をしてしまったが、やっぱり勘違いではない気がする。
少し冷めた目を向けられたから。
桃山栞奈は僕の視線に気づいて、こっちみんなよと牽制をしたのだろう、たぶん。
「はぁ」
ため息が出る。
盗み見ていたのがバレるとか、滅茶苦茶きまずいじゃないか!
同じクラスだぞ!
授業によってはグループを組めなどと言われて一緒になってしまう可能性もあるのだ。
心が少しだけざわついた。
失態だ。失態を犯した。
「はぁ……」
深いため息が出てしまう。
考えすぎかと思われるかもしれないが、思春期男子はこのくらい考えるのが普通だ!
人間関係を構築するうえで、こうやって考え悩むことは大事だのだ!
いや、友達のいない僕が言うのはどうなんだ。
……人間関係で悩みたくなんてないからこうやって一人なのに。
やめよ、馬鹿らしいな。
きっと面と向かって何かを言われることはないだろう。
ていうか、結局じっと見てしまっていた僕が悪いし。
ここでの話は、墓場まで持っていこう。
僕はそう心に誓って机に突っ伏した。
「はぁ」
三度、深いため息が出た。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
家に帰ってきた。
家に帰ってきたということは、僕の絶望が終わり、希望が待っているということだ。
嬉しい。
今日も帰ってこれて嬉しいぞマイホーム&マイルーム。
手洗いうがいをして顔も綺麗にした後、冷蔵庫からドクペを出して部屋に行く。
「かぁ~、キンキンに冷えてやがる」
思わず藤原○也みたいな声が出た――あ、ちがうカ○ジか。
まぁ同じようなもんだ。同一人物だよあれは。だってあんなに本物じゃないか。あれ以上に本人なんていないだろ(伝われ)。
ドクペ片手にゲーミングPCを起動して、前のモニターにYouTubeとネットサーフィン用のブラウザを起こして半分に分ける。
完璧だ。
片方で面白そうな動画とかをみて、片方でTwitterとかを漁るのだ。
うん、今日も神絵師たちがエッチな絵を投下しているな。ありがたや~と頭を下げて手を合わせてから収穫作業へと急ぐ。
ひとつひとつにいいねを付ければ完璧だ。
いつでもおかずになる。
いやエッチな話で。べつにご飯の話ではないぞ純粋な民達よ。
「いつもながら素晴らしいな。好きなことして生きていけるって最高だ。YouTuberになりたい。YouTuberになってゲームしながら金を稼ぎたい」
俗な発言をしつつ、僕はモニターに目を走らせる。
WEB小説もつまみつつ、そこら辺に置いてあったお菓子を貪る。
「生きてるってこういうことだな」
どこかの誰かに怒られそうな生活をしつつ、こんな発言をしていたらさらに怒られそうだが、しかしマイルームは自由だ!
誰にも邪魔されない僕だけの部屋だ!
いつエロゲしてもいいし、いつエロ動画見てもいいし、いつ抜いてもいい。
僕はなんて快適空間を作り出してしまったんだ……。
よし、ヘッドホンをつけて今日もとことん楽しもうじゃない――
「――ちょっと入るぞ」
「まてぇええええええええええええええええ」
まずい、モニターにエロイラストがでかでかと表示されている!
一瞬で脱ぎ掛けたズボンを履き直し、僕は速攻でマウスを動かして後ろを向いた。
「だ、大丈夫か……?」
そこには驚愕の面持ちでこちらを見る父――
僕は平然を装いつつ大丈夫だけど、というが、果たして本当に平然を保てているか、ワンチャン見られているのでは?と勘繰りつつ、父の動向を伺う。
「なに、どうしたの?なんかこう、なんか、なんかあったの?なんか」
「あぁいや、ちょっと話すことがあってだな。そのために来たんだが……」
来たんだがなんだ。やっぱり息子の大事な息子を少し見せてしまったのか僕は。
嫌だ。人生で初めてちんこを見せるのが父だなんて、そんな人生僕は求めていない!
「なに、な、何を話したいの?早めにお願い」
僕は少し額に汗を掻きながらそう言うと、父はまぁいいかとこぼした後に、コホンと咳を一つ。
「実はな――」
父は勿体ぶりながら、だんだんと少しによによとした顔で、
「――父さん再婚したぞ!!」
「――え?」
え?
「そしてもう、今日からこの家で生活するぞ!」
え?
……なにいってんだこいつ。
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