第100話 電忍法
あらすじ 抵抗空しく。
電撃だった。
「……うえ、う゛」
僕は口の中のものをティッシュに吐く。
「オレの忍法にこういう使い方があるとはな」
高揚した声だった。
「知らなかったぜ。ガキのオレに教える前に親が死んじまったからだろうが、なぁ? ニコ。凄かっただろ?」
自分のズボンの紐を結びながら、サタカは僕を見下ろしている。行為の最中から、その視線は鋭さを増していた。
強くなっていくのはわかった。
「こんなことして、僕が黙ってるとでも」
けど、知ったことじゃない。
忍者としての才能の開花かもしれないが、それを一緒に喜べる訳がないし、そんなものをこれから生かさせるつもりもない。ここで殺す。
「もう忍魂も残ってないだろ」
殺してやる。
「タカセに知られたくないだろ?」
だが、サタカは僕にスマホを見せつけた。
「!? いつ」
「忍法だ。オレは自分の目で見たものを動画として記録媒体に残すことができる。残しながら再生だってできる。オマエをいたぶりながら何度も再生した。興奮が止まらなくてな……やっとわかったよ。タカセが好きなんだろ?」
同世代の男子は、悪辣な男へと脱皮した。
「そんなこと」
僕はその事実に恐怖する。
セックスは人を変える。自分自身、変わった自覚もある。けれど、数時間だ。失恋に傷ついていたのもウソじゃないはずだ。男で初体験を迎えていいのかと問うて動揺もしていた。
「ずっと外を気にしてたじゃねぇか。見られたくないんだろ? オレにされて絶頂するのを。女に戻されて泣きじゃくったのを。終わらせるためにしゃぶるまでしたのを。なぁ?」
それが、ここまで。
「殺して、消す」
「タカセに送信できるぜ?」
「……!」
動こうとした僕の身体を電撃のような言葉が食い止める。行為の最中もそうだった。抵抗しようとした瞬間に動けなくされた。自分でコントロールできない射精なんて何ヶ月かぶりだった。
見られたくない。
みっともない場面はいくらでも見せたけど、同性愛者じゃない僕にとってのこれは、だれにも知られたくない行為で、だれの記憶にも残って欲しくない醜態だった。殺すか、死ぬか。
「悪いようにはしねぇよ。ニコ。気が変わったんだ。寝取るのは止めだ。こんな気持ちいいのを、タカセに復讐するために使うなんてもったいねぇ。オレをオマエのセックスフレンドにしろよ」
サタカは気持ち悪いことを言い出した。
「ふざけるなよ」
「オレがオマエを好きだって言ってるんだよ」
「女にフられたからって男に走るとか」
「女とか男とかでもねぇ。オマエだからだ」
そう言うと、僕の顔を掴んでキスしてくる。
「ううっ」
逃げようとした僕に弱い電気が走った。
それはピンポイントに忍魂を集めているちんちんに流れ込んで、制御できない射精を促す。行動を阻害するには十分な効果だった。
「これでおあいこだ」
すかさず、サタカは咥えていた。
「本気だってわかるだろ?」
「なに、考えてんだ」
頭のおかしい人間が生まれてしまった。
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