第76話 ハリウッドスター
あらすじ アナルと引き替えに男に戻った。
タカセさんたちは移動するらしい。
忍法を解いたのでくのいちの追跡は避けられるが、一人暮らしのアパートが近く、学校も遠くはなく、セックスフレンドの家でもある。地道な捜査を行えばいずれは辿り着かれる。
ロッカク・タカセという女子高生の生活圏内。
そこからは離れて、今後のことを落ち着いて考えようと言うことらしい。その方が安全ならば僕としても拒む理由はない。拒む権利なんて与えられてないとは思ってる。
どっちのくのいちも強引だった。
「……こんな服しかないの?」
しかし、それとこれとは別問題だ。
「パパの服でごめんなんだわ」
「だれの服かじゃなくて!」
シマさんのベッドの上に広げられた数種類の服、すべてスーツなのはともかく、縦ストライプの金色と紫色とワインレッド。こんな服を着てる人は見たことがない。見たくもない。
ヤクザだ。
「金色がよくない?」
タカセさんは真顔で言った。
「マジで言ってんの?」
僕は信じられない。
雑に派手すぎだ。
「見る目あるね。いっちゃん高いと思う。たぶん軽自動車ぐらい買えるオーダーメイド。既製品と絶対に比較されない服を欲しがるんだわパパ。どチビのオッサンだから」
「ニコと背が変わらないの?」
「うん。あー、横幅は倍ぐらいあるけど?」
「だからズボンがこんな……」
タカセさんは広げる。
ストライプでもまるで細くは見えない両脚を突っ込めそうな穴が二つ繋がったズボンと呼ぶにはトランクス感がありすぎるもの。
「でもちょうど良いと思うんだわ。ニコの勃ってるちんちんを隠すならこのくらいの余裕」
「……シマから見てもそうなんだ」
タカセさんは少し考え込んだ。
「改造モノならもっと訳わからん形も大きさも知ってるけど、天然モノとしたら……タカセはそれで選んだのかと思ったぐらい。シマちゃんもセンシティブ過ぎるかと話題にするのを躊躇ったんだわ。空気読むときは読む……」
「そんなに大きい?」
なんで二人は深刻な顔をするんだ。
「「大きい」」
「でもイチさんは別に」
「基準がアレなのはどうかと思うよ。ニコ」
タカセさんは首を振った。
「あの体格なら……いやそれでも」
「母さんが言うには、父さんそっくりだって」
幼い頃からちんちんのサイズは親に褒められていた。それがおかしなことだと言うことは自慢して見せびらかした保育園で知った。保護者会が開かれ、母さんが他の子の母親から非常識だと怒られた、らしい。
それからは厳しく言いつけられ、プールなんかにもアレルギーとか言って参加せず、男子の友達もあまり作らず、極力隠してきたのだが、久しぶりにちんちんを見た他人のくのいちが特に反応しなかったので大丈夫なのかと思ったのだ。
身体と比較して適正なサイズになったと。
「……どんな親子の会話!?」
タカセさんは口を押さえた。
「ニコの父さんはなにやってる人なん?」
「ハリウッドスター」
シマさんの質問に僕は答える。
「「んん!?」」
そういう反応をされるのもわかってた。
「会ったことないんだ。僕は。ただ、母さんはその人がずっと好きだったらしくて、認知してくれなくてもいいから子供が欲しいって、なんか……頑張ったって言ってた。えーと、スマホ貸して」
「いいけど」
タカセさんのスマホでその人の名前を検索する。
「ただ、僕も顔は似てる気がする」
信じられない話だし、信じてもらいたい訳でもないけど、自分自身としてはなんとなく納得してるところがある。あと背が高いので、僕もいずれ伸びるんだという希望を持ってる。
「「あー……」」
二人も同様の印象を持ったようだ。
有名は有名だけど、すぐ名前は出てこない。
主演もあるけど脇役も多い。
「カッコいいけどおじいちゃんじゃない?」
感想に困った感じでタカセさんは言った。
「んー、だからこそリアルなんだわ……お母さんが子供の頃から映画に出ていて、出演が途切れてなくて、日本でもヒット作があって……ガチ感が、子供に教えるウソじゃないんだわ」
シマさんは僕と画像を見比べている。
「じゃ、金色のスーツでいいね」
タカセさんは僕に押しつける。
「え?」
「ハリウッドスターの息子なら似合うんだわ」
シマさんも頷く。
「……ええ」
よくわからない着地点だった。
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