処刑日誌
賢者
第1話 ライオン
××年××月××日
今日の仕事はここ最近で1番の酷さだった。どんなに棒で叩いて、拳で殴ってもまったく言うことを聞きやしない。挙句の果ては通行人の持っていた酒瓶を奪うとぐびぐびと飲み始めた。必死になって処刑台に連れてきたはいいものの、のんびりと酒を飲んでるものだからシュミットさんもつい痺れを切らして瓶ごと首を切り落としてしまったよ。おかげで、血をもろに浴びるわ、民衆からはボロクソに文句を言われるは散々の日だった。
明日の囚人は楽だといいなぁ。
××年××月××日
今日の囚人は年若い女性だった。栄養が足りていないのか痩せ細っていて枯れ木のような腕をしていた。顔は薄汚れていたけど、端正で整っていてなかなかの美人だった。こんな美人を処刑するなんてもったいない。でも、最近はこういう哀れな女性が多い。不思議に思って今日シュミットに聞いて見た。嬰児殺しという罪らしい。子供を作って男に捨てられた女性が育てることができず殺してしまう。まあ今時よくある事みたい。その女性の処刑の開始は結構後で、ちょうど何人かを処刑した後だったから、だいぶ処刑場が荒れてた。囚人によっては卒倒する人もいるけど目を瞑ってシュミットが現れるまで祈り続けてた。最後は自ら処刑椅子に座って首を差し出した所は珍しくシュミットも美しい死だと感心してたなあ。処刑も綺麗に一撃で首を落とせて、民衆も喜んでいたよ。
××年××月××日
今日は溺死刑だった。溺死刑は斬首の時みたいに囚人を直接押さえなくていいから少し安心。もちろんシュミットさんの技量は信頼してるけどさ、この前の処刑は自分の指スレスレのところを剣が通ったから、あれは肝が冷えたね。まぁ、だから気が緩んだわけじゃないけど、今回はミスしちゃってシュミットに怒られた。囚人を処刑場に連れてきて、麻袋に詰めて桟橋から投げ込んだまではよかったんだけど、水中で囚人があまりに暴れるもんだから囚人を抑え込んでいた竿が折れちゃった。流石に今日のは怒られたなぁ。反省。
××年××月××日
今日のシュミットは凄かった!囚人が小柄で首が小さくてどうするんだろうと見てたらコインをおもむろに取り出して投げたんだ!囚人はつい目でそちらを見ようと首を伸ばしたところをスパッと首を一撃で切り落とした!囚人を動揺させないように剣を隠してたみたいだし流石だなぁ。自分も早くシュミットみたいになれるように練習しないと!
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