俺が名探偵となるその日まで
孤阪 しゅう
第1話 人生を変えた日
俺の名は、シオザキ ユウタ
そしてここは日本一の探偵学校。
通称 STM ( Solve the mystery )
数々の名探偵がここから生まれている。
もちろん入試も最難関。
入学費も普通の学校とは比にならない。
俺は今日からこの学校の生徒となる!
だが、俺は頭がいいわけでもなくお金持ちでもない。
それどころか俺は少し前までニートだった。
--------10ヶ月前--------
「ユウタ、お前いつになったら新しいバイト先見つけるんだ?」
新聞を机に置きながら親父が言った。
俺は読んでいた推理小説で顔を覆う。
俺の親父は下町で探偵事務所を営んでいる。
母は幼い頃に、仕事を理由にNYは飛んだ。
そして俺はと言うと、彼女いない歴=年齢。小学校の時に夏休みの自由研究で、ところてんについて研究したり、中学校で1人で推理小説愛好会立ち上げたりしたせいか、周りからは変わり者と呼ばれていた。高校卒業後、大学受験に失敗し、来年から通う予定の予備校のために、バイトをして資金を貯めていた。まあそのバイトというのも一週間前にクビになったところなんだがな。
「ユウタは何になりたいんだ?」
俺は小説の中の探偵が事件の謎を解き明かした終えたところで栞を挟んで本を閉じ、こう言った。
「探偵だよ。」
親父はいつものことだと言わんばかりに、
「そんな小説ばっかり読んでないで、そろそろ面接にでも行け」
と、少しバカにしたように鼻で笑い
「じゃあいつものあれ、行ってくるからな。
あ、そうそうお前が小さい頃から行きたがってた探偵学校、STMだっけ?そこのチラシ入ってたからそこ置いといたぞ。
ここにでも入ってくれたら探偵も夢じゃないんだけどな。」
と言いながら玄関へ行き靴を履く
ちなみにいつものアレとは、俺がバイトをクビになった次の日から親父が毎日行っている、隣町の富豪の愛犬探しだ。なんでも、その犬を見つけたら、多額の報酬がもらえるとのことだが、ドッグフードをカバンに詰めて家を出て行く親父に見つかるとは思わない。
「入学させてくれる金はあるのかよ」
俺が言い返してやったぞ!と、満足げな顔で親父を見ると、
「俺もその学校に入れてあげれるもんならそうしたいと何度も思ったさ。」
と、ドアノブをひねりながら言った。
建て付けの悪い、金属製の重いドアがゆっくり閉まっていくのを見ながら
「...すまん。」
俺は小さな声でそう呟いた。
テーブルに置いてあったペットボトルの麦茶を開けて、コップに注ごうとしたその時。
(((ユ、ユユ、ユウタァァァァ)))
家の外から親父の声がした。
俺は急いで玄関のドアをあけると、
そこには顔のいたる所から見たこともないような量の汗をかいた父がいた。
そして腕の中には、一匹の犬がいた。
「こいつだよ。例の犬。家の前にいた。」
親父の声は震えている。
「まじかよ!やったじゃん!
で、いくら貰えるんだよ、その報酬とかいうのはよ!」
「1000万円だ。」
「え、は、ええええええ!?」
-------- 3日後 --------
「さて、この報酬の使い道だが、、」
今までの生活では無縁だった最寄りの駅前にあるフレンチレストランで、父が口を開く。
「親父の手柄なんだから親父の好きなように使えよ!わざわざ俺に相談しなくても。」
そう言いながら、分け前が降ってくることを心の中で願っていると、
「いや、俺は一度来てみたかったこのレストランに来れただけで十分だ。」
親父がまっすぐ俺をみて言う。
「じゃあ、、貯金だな!」
俺がそう言うと、親父がなんの前振りもなくこう言った。
「お前、あの探偵学校行けよ。」
俺は親父の言っていることをすんなりとは理解できなかった。
「ずっと行きたかったんだろ。」
「・・・けど、俺頭もよくねえし。
何より、親父に申し訳ない、、、」
俺が親父から目線を逸らしてそう言うと
親父はナイフとフォークを慣れない手つきで持ち、ステーキをきりながらこう言った。
「母さんとの約束なんだよ。
ユウタのやりたいことをサポートするって のが。そのかわり、今から入試までの期間、勉強はしっかり頑張れ。探偵のことなら多少は手助けしてやれるが、最後はお前次第だからな!」
俺はもう一度親父の方に視線を戻し、
「、、、ありがとう。やってみるよ!」
と、お洒落な店内には全く似合わないような声量でこたえた。
こうして俺は入試までの8ヶ月、寝る間を惜しんで猛勉強した。
親父の協力もあり、なんとか必要な力はつけたはずだったが、試しに過去の問題を解いてみると、結果は26点。絶望だ。
しかし、8ヶ月という期間は無情にも短く、
早くも入試前日を迎えてしまった。
俺は明日に備えるためにと、
20時に就寝した。
< 続く> (次回: 第2話 運だけで生きてゆく)
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