怠惰な俺が

佐藤敦樹

第1話

「ん…あぁぁあ」



親の顔よりも見た天井をぼーっと見ながら大きな欠伸を1つ


枕の横に適当に置かれている携帯には


『11:35』


「ぁー…」


気合いを入れるために出した声はまさに寝起きで声にならない、ため息のようなものだった。


携帯のロックが寝てるからか顔認証で開かないことに少し面倒臭さを感じながら数字を打ち込んでホームに入る。


そこで俺を迎え入れるのは恥じらうようなポーズをした一番好きな女キャラクター「ライ・アルセル」 


だけどもう見慣れていて何の感情も湧かない。

視界には入るけど脳のリソースを全く割かないような、そんな感覚。


いままで何百回も繰り返した動作でアプリを開く。


題名は…なんだったか

みんな、これを

『UTO(ユト)』

って呼んでるけど、なんかの略だったな




…まぁ、なんでもいいや


いつも通りログボを受け取って…あれ、そうか今日からピックアップきてたんだっけな

あ、まぁまぁ可愛い。CVも合ってる感じだし、引いてもいいなー



とか言うのを5分ぐらいやってるといつのまにか目が覚めてる。これが朝の俺のルーティーン。



(…そういや、今日から8月だったっけか。ほかのやつらも夏休みだしな、会ったら嫌だし外に出ないでおくか…って最近はいつものことか。フッ)



なにかしらの理由でする自虐もこれまで何百回やってきてる、朝のルーティーン。

我ながら慣れたもんで失笑ですらなく強めに吐く鼻息ぐらいで完結させる程に上達した。


そんなことを思いながら引いたガチャはいつもの最低保証。

最早何も思わない。





(起きるか………なんかあったかな)



腹の減りと、何より喉の渇きを感じてベッドから立とうとする。



「んぉぁあ」

 

自分でもなんだこれ、と思ってしまうような声で手をつき、膝を立て、ズルズルと起き上がっていく。


親指と人差し指で目頭を摘んで少しとれた目脂をゴミ箱の上で擦って落とす。入ったかどうかなんて見もしない。


冷蔵庫までフラフラとたどり着いて開けると中には2Lの「うぇーい、お茶」が残り1杯分ぐらいしかなかった。


(おーい、まじかよ、お茶。…はぁ買いに行くかー)



思い立った俺は寝汗を落としにシャワーを浴びる。38℃ぐらいの温度で寝起きの火照った体を気持ちよく冷ます。これで俺の朝のルーティーンが終わる。



(そういや何ヶ月風呂に入ってないっけ…って、これだけ聞くと超不潔なやつだな。この言い方だとシャワー派が迫害されることまちがいないな)


そんな下らないことを考えながら服を着てブランチという名の朝抜きの昼食をとる。





……料理(インスタントラーメン)が出来上がるまでに頭の中で、さっきの勘違いから始まった【風呂派vsシャワー派】が世界大戦まで発展したことは言わないでおこう。

 





「あー行くかー……」


まだ外出する気のない自分自身なら言い聞かせるように呟いてドアを開ける。


近くの緑色のコンビニに入って惣菜やら、弁当やらをカゴに適当に入れていく。


(…偶にはいつもの赤じゃなくて緑でも良いかもなー)


UTOをプレイしながら黙々とカゴへの商品の移行作業をしていると前から制服を着た女子が歩いて来た。


何とはなく気が引けてスマホの画面をホームに戻す。



(はぁあ、毎回こうすんのもだるいな) 


そう思うがいなやすぐにアプリを消す。

背景も最初から入っている風景にして、ライの写真も消す。



(今回は3週間楽しめたなー………続けられねえな)




珍しく2度目の自己嫌悪をしながら。


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