全国大学爆破サークル合同夏休み合宿
本庄 照
大学生なら教授を恨め
夏だ海だ合宿だ──ッ!
さあ大学を爆破するために今日も楽しくトレーニングしていこう!
そして夜には各校で集まって盛大に飲み会をしようじゃないか!
なお、最終日には模擬大学爆破大会が行われますので奮ってご参加ください。
以上、全国大学爆破サークル連合会会長、横浜大学経済学部四年、
そしてもう一人、昨年度の第9回模擬大学爆破大会優勝者から一言いただきます! 名古屋大学大学院博士課程在学中、
「教授死ね──ッ!」
藤代さんでした。ありがとうございました!
それでは只今より、全国大学爆破サークル合同夏休み合宿をはじめます!
***
「我々を大学の犬呼ばわりとは随分ですねぇ……。あんたたちも所詮は学問の犬でしょうに」
いつの間に、こんな不穏な状況に陥ってしまったのだろう。楽しい楽しい夏合宿のはずだったのに。
岐阜の山奥(もちろん海はない)から一転、舞台は神奈川県横浜市、横浜大学の応接室である。横浜大学大学爆破サークル部長の濱は、睨み合う二人の男の横で濡れ縮んだ子犬のように震えていた。
「大学爆破サークルだから爆破予告を出すに違いない? そんな短絡的な。
八月十五日午後五時半。理学部研究棟五階を爆破するらしい。随分詳細な爆破予告から作られた紙飛行機は、横浜大学の学長の顔に当たって机にポトリと落ちた。
ソファにふんぞり返ってにやついているのは、サークル連合会名誉会長の
「学長宛てに爆破予告ですか。誰から恨みを買ったんです?」
「濱くんに決まってるだろう。爆破予告が上品か下品かなんて些細なことだ。それはあくまで
学長も学長で完全に迎え撃ちモードに入っている。今の学長は大学爆破に反対で、学長が変わってからというもの、大学爆破は非常に冷遇されていた。
「第一、彼が爆破予告に関わっているという証拠はあるのですか?」
「証拠なんて必要ないだろう。どうせ異能を使って爆破するんだろ?」
濱は異能持ち、これは事実だった。
「あんた、異能の存在を信じていないそうですね」
「あんなもの、どうせ手品だろう。その人間でしか再現できないものを科学と呼ぶにはおこがましい。異能という非科学的な存在を私は信じない」
「いいえ、再現性じゃありません。これは技術者の腕ですよ」
帝はソファにふんぞり返ったまま、組んだ足の上で丁寧に手を重ねる。
「【
帝が叫んだのは直後だった。瞬間、机上の紙飛行機がスッと浮き上がり、学長の頭の周りを二周してまた胸ポケットに戻る。
「法学部の俺の能力は【遺言執行人】、あらかじめ動作を定めておけば、あらかじめ定まった時間が経つことで、無機物を好きに動かせる能力です」
「それが君の本気か? ふん、紙飛行機一つを動かす程度の能力なんてたかがしれているな。やはり手品の域は出ない」
「ほう、本気とおっしゃいましたか?」
「ダメです! 帝さんが本気でやったら、死人が出ちゃいます!」
濱の必死の言葉で学長の目尻が動いたのを、帝は見逃さなかった。
「まあ俺が本気でやるかどうかはどうでもいい。横浜大学側が我々を首謀者と認定するのならそれで構いませんし、我々は受けて立ちます。どうぞ、警察にでもなんでも通報してください。戦争になろうと、我々は受けて立つ」
「我々に勝手に僕を入れないでくださいよォ~~ッ!!」
こんなはずじゃなかった。濱は背中を丸めて小さくなる。
俺は平穏に大学を爆破したいだけなのに。
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