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古海うろこ

地獄で踊ろう

 結局、釈迦堂が部屋から出てきたのは三日後だった。おれはその間ずっと扉の前でうずくまったり、時々釈迦堂に声をかけたり眠ったりしていた。現れた釈迦堂は随分やつれて、頭もぼさぼさで、髭も生えていたので、これはゼミの女の子たちが見たら泣くな、と思った。おれはお前がどんなふうになったってそばにいてやるのになあ。

「富木、俺、やっぱりあいつを殺すよ」

 七十二時間、釈迦堂は考えた。あらゆる世界線を旅して、けれどその中にひとつだっておれと一緒の未来はあった?

「なあ、飯食いに行こう。その前に風呂だけど、この前打ち上げした焼肉屋、個室もあるんだって。あ、焼肉なら風呂入っても一緒かな」

「富木」

「最後の晩餐だ、いいだろ」

 おれだってずっと考えていた。釈迦堂が望むなら地獄で踊ろうとさえ思って、繰り返しシュミレーションした。おれが囮になって、釈迦堂が、背後から。でももういいよ。

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