第50話 バレンタイン②
学校が終わり、放課後になった。
蓮は楓と一緒に下校をしている。しかし、早くチョコを食べたいので、少し歩くスピードがいつもよりも速くなってしまう。
「ふふっ、大丈夫ですよっ焦らなくてもチョコは逃げませんからっ」
「ゔっ・・・・・・」
楓は口に手を当てて、フニャリと笑い、ブロンドの髪の毛をフワッと揺らした。
「可愛い・・・・・・」
「えっ?・・・・・・・・・」
「あっ、いや、なんでもない」
「もう一回言ってくださいっ」
聞き間違いかと思い、楓を見ると、大きな瞳で俺を見上げてくる。
流石に不意に出てしまった声で、意図的に言おうとすると、少し恥ずかしい。
「恥ずかしいんだけど」
「お願いしますっ」
「か、可愛い」
「あ、ありがとう、ございますっ」
蓮も楓も2人とも顔が赤くなる。冷たい風が吹きマフラーが揺れる。
◆◆◆
家に着いたあと、すぐに冷蔵庫を開けようとすると
「蓮くん?手を洗ってからにしてくださいっ」
「はいっ、申し訳ありません・・・・・・」
「ご飯食べたあとじゃダメなんですかっ?」
「我慢できない」
ちゃんとゴシゴシと石鹸で手を洗いコップに水を入れうがいをして、タオルで吹き、再度冷蔵庫を開ける。
開ける時に楓の方を見ると、ニコッと微笑みながら
「はいっ、上手にできましたっ」
「子供扱い・・・・・・」
「ふふっ、可愛いですよっ?」
蓮は恥ずかしさのあまり、顔が赤くなる。
「あれっ?ない」
「あっ、見つかってはいけないと思って、隠してたんでしたっ!」
そう言って楓は冷蔵庫に隠してあるチョコレートを取り出した。
「蓮くん、チョコレートケーキでもよかったですかっ?」
「楓の作るやつだったらなんでも良いよ、絶対どれも美味しいし」
「・・・・・・そういうの、他の子に言っちゃダメですよっ?」
「言わないよ、楓だけだよ」
大体、蓮にそんなことを言える女子は楓くらいしか居ない。
千夏は、美味しいのは美味しいのだが、唐辛子やハバネロを入れるやつに言いたくはない。
すると、楓がポカポカとおっさんのぬいぐるみの顔で俺を可愛らしく殴ってくる。
楓を鎮めるために、頭を優しく撫でておく。すると機嫌が治ったのか、ぬいぐるみで殴っては来なくなった。
「さっ!た、食べましょうかっ」
「あ、あぁ、そうだな」
皿に乗せられたケーキをリビングまで持っていく。
フォークでケーキの先を切り、口に運ぶ、甘さ控えめのビターな味でさすが楓、好みの味を理解しているといった所だった。
「蓮くんっ?」
「ん?どうした?」
「はいっ、あーん」
すると、楓が俺に向かってあーんしてきた。
すぐに食べたい所なのだが、最近俺ばっか恥ずかしくなっているので、食べるのを
「いらないですかっ?」
「いや、要りますっ」
あっさり負けた。そのチョコレートケーキかさっきと味付けが違うのかというほど甘さがあった気がする。
チョコレートケーキを食べたあと洗い物をして、ひと段落つき、リビングでくつろいでいると、楓がもじもじしながら蓮の横にちょこんと座る。
どうしたんだと不思議に思い楓を見ると、楓の頬は赤く染まっていた。
「あのっ、蓮くん」
「ど、どうした?」
「きょ、今日は・・・・・・一つお願い事聞いてあげますっ」
「それは・・・・・・なんでも?」
「・・・・・・・・・」
楓は黙りながらも、コクリッと縦に頭を振った。
蓮もその反応に、ドキッときてしまった。
しかし、流石にこの感じで至ってしまうと、後々後悔しそうなので、冷静さを頑張って保つ。
「楓、俺も男だ、流石に我慢できなくなるぞ」
「わ、わかってますっ」
「もう少し大人になってからにしよう、そういうのは・・・・・・」
「ご、ごめんなさいっ」
「い、いやこっちこそ」
しばらく沈黙が続いた。
「あのさ、じゃあ代わりと言ったらあれだけど、その・・・・・・」
「なんですかっ?」
「ひ、膝枕してほしい」
すると、楓は口元に手を当ててニッコリと微笑
む。
「ふふっ、良いですよっ」
楓は「さっどうぞっ」と膝をぽんぽんと叩いている。
「失礼しますっ」
そう言って俺は、柔らかい楓の太ももに頭を乗せる。その瞬間、ふわっと甘い香りがして、柔らかい感触とモチモチの肌触りが最高だった。
まだ、楓は着替えてなかったので、制服のままだった。ストッキングを履いていたが、だからと言ってなにが変わるわけでもなかった。
上を見ると、楓の立派なEカップの山があったので、いつかこの山を山頂まで登ることができるのだろうかと、眺めていた。
心臓の音は只々速くなるのがわかった。
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