第36話 5人で晩ごはん
しばらくすると玲子が買い物から帰ってきた。リビングの扉を開き、両手には大きなレジ袋を持って入ってくる。
それに気づいた楓はすぐにソファから立ち上がり玲子の持っている袋を片方持った。
「あら、ありがとうねぇ」
「いえっ、これくらいは・・・・・・」
「ウチの子達も見習ってほしいわ〜」
ねぇ?と言って蓮と雛を交互に見るが、二人して知らん顔をして、そっぽ向いていた。
しかし、雛は蓮を裏切るかのように、ソファから立ち上がり、スタスタとキッチンの方へ行き
「私も料理手伝う〜!」
などと言っていた。じゃあ行けばいいじゃないかと言われるかもしれないが、自分が行っても役立たずで、なにもできるわけないし、そもそも4人もいたらキッチンが狭い。
なぜか除け者にされた感が強く、蓮は自分の部屋に向かった。
ドアを開け、懐かしい部屋だった。
(やっぱりなんか落ち着くなぁ)
不思議となぜか落ち着いてきた。そのままベッドに倒れ込んだ。
次第に眠くなってきて、いつのまにか、まぶたを閉じていた。
そして、何かで頬をつつかれているような気がして目を覚ました。
すると楓が指で俺の頬をつついていた。
「あっ!ごめんなさいっ、つい・・・・・・」
「つい、でつつきたくなるものか?」
「はいっ、案外というか柔らかいですよっ?」
「俺は男だぞ?」
「はいっ?それがどうかしたんですか?」
ダメだ分かってないと、思いながら男の頬なんて触っても気持ちよくないだろと疑問に思っていたが本人がなぜか嬉しそうだったので、よしとする。
「それで?なにか用事あった?」
「あっ、そうでした!」
両手を合わせて蓮に微笑んでくる。
「ご飯できましたよっ?」
「えっ?いくらなんでも早すぎ・・・・・・」
もう既に、18時を過ぎていた。ということは4時間以上も眠っていたことになってしまう。
蓮は頭を抱えながら、楓に「分かった」と言ってベッドから体を起こして、一階に降りていく。
すると、そこには父さんの姿があった。
「あれっ?父さん帰ってたんだ」
「ただいま蓮」
「おかえり・・・・・・」
「まぁ、話は後で聞くとして今は、ご飯をみんなで食べようか」
「もうお腹すいたー」と雛がよだれを
なんとも、慣れない感じだが、これがもし慣れたら・・・・・・などと考えてしまって顔が赤くなっているのを周りにバレないように、上手く隠した。
「そういえば、楓ちゃんとてもお料理上手ね!」
「楓お姉さんが作った料理めっちゃ美味いよ?!」
「ありがとうございますっ」
照れたように頬を赤く染めていた。その様子を、玲子と雛は口を揃えて「可愛い〜」と言っていた。たしかにめちゃくちゃ可愛い。
「玲子さんの料理も美味しいですよ?」
「あらっ。ありがとうっ」
「ねっ?蓮君」
「えっ・・・・・・あぁ、うん」
「あぁ、ダメね、蓮はもう楓ちゃんの料理食べてるから私の料理じゃ満足しないわよ」
たしかに、楓の料理は美味しいが、それとは別に懐かしい味を静かに堪能していたのに、この母親ときたら・・・・・・
「ちげぇよ、なんか、懐かしいなって思って食べてただけで、母さんの料理が美味しくないとかではない」
「じゃあ、母さんと楓ちゃんどっちが美味しい?」
「楓」
俺は考える間もなく、すぐに返答した。すると玲子はそれを聞いて少し拗ねた様子だった。
「まぁまぁ、玲子さんも美味しいよ、蓮?母さんの事も考えてあげて?」
「あらっ、祐介さんったら」
祐介がフォローすると、玲子はさっきまでの拗ねた様子はなく、とてもニコニコしていた。
「あっ、楓そういえば、こちら父さんの」
「早坂
「あれっ?知ってるの?」
「さっき本人から聞いたので」
あー、そういえば寝てたんだったと思い出し、雛にその様子を見られていて、なぜかニヤニヤしていたのが不思議だった。
(でも・・・・・・楽しくやれそうだな)
そう思って、箸で温かい料理を口に運ぶ。
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