第27話 クリスマス
「メリークリスマス!!」
そう言ってニコニコしている楓は家に
小さくても、無いよりは良いだろうと楓が部屋に飾ったものだ。
「クリスマスですよ!」
「あ、あぁ、そうだなぁ」
昨日もテンションが上がっていたが、今日はもっとテンションが上がっている。
「そんなに楽しみだったのか?」
「あ、そういうわけでは無いんですけどイギリスにいた頃の記憶がとっても印象的でして・・・・・・それをいつも思い出すんです」
イギリスにいた頃楓は、よくお母さんと二人でクリスマスは出かけていたらしい。
大きなクリスマスツリーを見て、イルミネーションが綺麗で、その光景はとても印象に残っているらしい。
そんな話をしている時の楓の瞳はとても輝いて見えた。
「早坂君には何かありますか?」
「何かって?」
「クリスマスに思い出です」
「クリスマス・・・・・・か」
中学生の時に元カノとクリスマスにデートをした時がある。
あの時は何もかもが楽しくて、全てが新しく見えた。
いつも通ってる帰り道なんかも、ショッピングモールの大きいツリーだって、普段はそこまで大きく感じないのに、アイツと一緒だったら、すごく大きく感じた。
そして、あの時俺は思った。これが幸せってことなんだって。
これがずっと続けば・・・・・・そう思っていたんだ。でも続かなかった。それが絶望だった。
すべてがあの時の俺には痛かった。
「あんまりいい思い出は・・・・・・いや、あったのかもしれない」
たしかにあの時はとても楽しかったし幸せだった。自分の感じた事に嘘はつきたくなかった。
「そう・・・・・・ですか」
「悪いな、なんか」
「い、いえっ!こちらから聞いたのですから」
さっきまで明るい雰囲気だったのに一気に暗くなってしまった。
悪いことをしてしまったと勝手に反省していた。
すると隣でなにやら、楓が太ももを叩いている。
「何してるんだ?」
「なにか辛いことがある時はいつでも頼ってくださいねっ!」
ぽんぽんも太ももを叩いている。膝枕をしてくれるということなのだろうか。
しかし、そんなことは今はできない。これ以上楓に踏み込んだら、取り返しのつかない事になりそうだったからだ。
「気持ちは嬉しいよ、でも心配すんな」
「そ、そうですかっ」
そう言ってやはり恥ずかしかったのかほんのり頬を赤く染めている。
「あのっ!今日は素敵な1日にしましょうねっ」
「ん?あぁ」
と、そっけない返事をすると、楓はふふっと笑いながら
「それじゃ素敵な1日には、なりませんよ?」
「うるせ」
とだけ返すとムッーと両頬が少し膨れていた。その姿を見て、蓮はやはり可愛いなと思ってしまった。
「てゆーか、クリスマス・イブがあんなに濃かったんだから、クリスマスはゆっくりしよーぜ」
「・・・・・・イルミネーション、見に行きたいですっ」
「イルミネーション?」
「はいっ、わがまま言ってすみませんっ、ですが私は早坂君とイルミネーションがみたいんですっ」
だからやけに、テンションが上がっていたのか、それにしてもなんで俺となんて行きたいんだと、蓮は考えても分からなかった。
「まぁ、いいけどこのままじゃ行けないから着替えてくるな」
「はいっ、ではおとなしく、待ちます」
そう言って楓は、お座りと言われてジッと待っている犬の様な感じだった。
楽しみすぎて、尻尾がぶんぶんと横に振っているのが見えた。
(本当に犬みたいだな・・・・・・)
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