公園で天使様を拾ったら「好き」と言われた件について

楠木のある

第一章 出会い

第1話 公園で天使様を拾う

「あんたってさぁ・・・なんていうか、重いっていうか、キモいのよねぇー」


 あははっ、と嘲笑うかのように、その女は言ってくる。


 そこで、俺は目覚めると、いつもの天井を見上げていた。変な汗も沢山出ていて、さっきの夢の出来事は、脳裏に焼き付いて離れないのだ。


「最悪の目覚めだ・・・・・・」


 早坂蓮はやさかれんは女が嫌いだ、正確には女が嫌いになった。

 中学の時、俺には一人のがいた。元カノとは、ある原因で別れた。


 ある原因というのは、俺が親友だと思ってた男に寝取られた事だ。


 親友は、そのあと土下座しながら謝ってきたので、許すことは絶対にないが、今後一切俺と関わらないという事を、誓った。


 元カノの方はというと、俺の家庭が少し裕福と聞くと、すぐに顔色を変えて来やがった。


「ごめんね〜アイツに襲われたのー信じて?」


 その一言で、俺の女性を見る目が変わった。女性はみんな、コイツと一緒なんだろうと思い、元カノには中指を立てて言ってやった。


「死ねよブス、お前の顔なんてもう見たくない」


 そこからは思い出したくもない、それを聞いていた元カノの友達が先生にチクリ、俺が怒られるなんとも、理不尽な話だ。



⭐︎⭐︎⭐︎


「蓮も可愛いと思うだろ?天使様」

「天使様?」

「知らねーのか?天使様と言ったら俺たちの学校で、一番可愛いって評判の女子じゃねぇか」


 綺麗なブロンドの髪、大きな瞳、そして完璧なスタイル。

 天使様はどれをとっても完璧らしい。そんな熱弁を隣で言っているのが、篠原拓人しのはらたくとまぁ、友達だ。


「興味ない」

「お前本当女子に疎いよな〜」


 そんなんじゃ彼女できないぞ?と言われても、俺は一生独身でいいと思っていた。

 どうせ、一人の女性を愛したところで、すぐに裏切られることになるのだから。


 バイトの帰り、コンビニに寄っていたらもうすっかり11時を過ぎていた。


 かなり遅くなってしまったと思い、少し早歩きで家まで帰ろうとするも、薄暗い夜道では、変な想像をしてしまうものだ。


 蓮のマンションの、近くには小さな公園がある。


 そこで、一人の女性がブランコに座っていた。幽霊は信じてはいないが、流石に不気味だった。


 少し好奇心が勝ってしまい、スマホのライトをつけ、恐る恐る近づいてみると、黒い髪に大きな瞳をした女だった。


 こちらに気づいているはずなのに、なにも動じない。

 しかし、その女の目にはどこか悲しさを感じさせる目をしていた。


「なぁ、お前なにしてんだ?」


 気づいたら声をかけていた。


「・・・・・・ブランコに乗っています」

「そういうことじゃなくて、なんでこんな時間までこの公園にいるか聞いてんだよ」

「帰る家がないんです・・・・・・」


 あぁ、ダメだコイツ頭のおかしいタイプだと思い、関わらない方がいいと考え、その場から立ち去ろうとした時。


 グギュルルルルーと中々に大きいお腹の音をその女は鳴らしていた。

 女を見ると、恥ずかしがる様子もなく、ただ何かに絶望した表情だった。


「なぁ、これやるよ腹減ってるんだろ?」


 そう言って蓮は、丁度コンビニで買ってきた肉まんを、彼女に渡す。


「えっ・・・・・・でも」

「いいから、俺お腹いっぱいだったの忘れてた」

「・・・・・・ありがとう・・・・・・ございます」


 そう言って、肉まんを頬張る姿は小動物のようだった。


 これで、お役御免と思い、その場から離れる。


 うえっ、うぇぇぇと言った今度は嗚咽のような、響きだった。

 すぐに振り向くと、今食べていた肉まんをそのまま吐いていた。


 いくら、女が嫌いでも、隣で吐いてるのを見て、放っておけるほど、蓮も鬼ではなかった。


 蓮はその女の腕を引っ張る。


「ちょっと・・・なにするんですか」

「病気で、家も無いとか言ってる奴を放っておけるほど、俺は鬼じゃ無い」

「私は別に病気じゃ・・・・・ただ、気分が悪いだけで」


 どうでもいいから来いと言い、自分の部屋に上がらせる。


 それで落ち着かせるためにホットココアを出す。


「ありがとうございます、落ち着きました」

「で?なんであんな所に居たんだよ」

「とある事情で・・・・・・」

「まぁ、言いたくないならいいけど、明日には帰れよ」

「なんで、そこまで優しくしてくれるんですか?」


 どこか警戒した表情で、こちらに問いかけてくる。警戒するのは当然だ、全く知らない相手の部屋に来ているんだから。


「俺と・・・同じ目をしてた」

「形も、大きさも違うと思いますけど・・・・・・」

「そういうことじゃない。現実に絶望した目、もう何もかも、どうでもいいと思ってる目」


 それを聞くと彼女は、図星だったのか、目を大きく見開いている。


「俺は、お前を襲うとか、そういうやましい気持ちはないから・・・・・」

「分かっています、早坂君」


 今俺の名前を呼んだ?なぜ、コイツが知ってるんだ?と疑問に思いながらもあまり追求はしなかった。


「風呂入ってこいよ、服は俺の貸してやるから」

「わかりました、じゃあお先に」


 そう言い、俺のパーカーやスウェットを貸す。


「お風呂ありがとうございます」


 そう言って出て来たのは、さっきまで黒だった髪の毛がブロンドに変わって居た。多分だがスプレーかなんかで黒く染めていたのだろう。


 そこで、拓人の言っていた事を思い出す。


 綺麗なブロンドの髪に大きな瞳、完璧なスタイル


 まさかとは思い、問いかけてみる。


「なぁ、まさか桜坂高校?」

「はい、そうですけど」

「何年何組?」

「1年3組」

「まさか・・・天使様?」


 その呼び方やめてくださいっ、と言いながら少しだけ頬を赤らめている。


「でも、全然関わったことない人にここまでできる早坂君の事少し見直しました」

「別に・・・・・・」


 ただ、見ていられなかっただけで見直されるような事はしていない。


「私好きになっちゃいました、早坂君のこと」

「冗談はよしてくれ」

としててですよ?」

「悪いけど俺はあんたが嫌いだ」


 そう言って、その場から逃げるようにお風呂に入る。




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