頼り頼られ
シヨゥ
第1話
他人軸で生きてきたように思う。
誰かの顔色をうかがい、誰かの願いをくみとろうとして失敗して。へこんで。自信をなくして。
それでも認められたくて、怒られたくなくて頑張って。失敗して。へこんで。自信をなくして。
終いには自分が信じられなくなって。自分が嫌いになって。存在価値を疑って。
頭がぐちゃぐちゃになって。死にたくなって。自殺を図って。
こうしてようやく私は病院に運ばれた。
よく生き残ったものだと感心してしまう。
全身の骨が複雑に折れ曲がっていた。その中には臓器を傷つけたものもあっただろう。
それでもお医者様の懸命な治療のおかげで生き残ってしまった。
手を煩わせた。痛みよりもその事実で涙が出てくる。
泣いてばかりの私に「痛みますか?」と尋ねてくる。その気づかいにまた泣けた。
気づかいに触れ続け、泣いてばかりの日々が続く。
そんなある日の問診のことだ。
「お手を煩わせてすみません」
そう泣きながら謝った。すると、
「お気になさらずに。それが仕事ですから。どんどん迷惑をかけてください」
と言われた。
「ぼくは思うんですよ。鈴木さんは自分を抑え込みすぎてるんじゃないかって」
「でも迷惑でしょ?」
「いいえ。もっと自分に素直になってください。あなたに頼られた分ぼくらはお返しをする。その代わりに費用をいただく。これはギブアンドテイクなんですよ」
そう言ってお医者様は微笑む。
「普段からもっとあれがしたい、これがしたいとおっしゃっていいと思います。きっと言われた相手は、それだったらとあなたに何かを求めてくる。
それを鈴木さんが受けられるかどうか。受けられないなら、『ここまでは私がやるからここまではお願いするね』みたいな話にする。
それが正しい形なんです。なんでもかんでも鈴木さんが相手を気づかって引き受ける必要はないんです」
「そうは言われても性格ですし」
「急には難しいと思いますが、少しずつ変わっていければいいんです。追い込まれて潰れるよりは頼って楽になりましょう」
「……はい」
「それじゃあ安静にしてください。もうそろそろ退院についてのお話ができるかと思いますので」
「分かりました。あの、ありがとうございます」
お医者様は一礼すると去っていった。
考え方を変えるというのは難しいものだ。
しかしながらわずかな変化も時間とともに大きな変化となる。
私はお医者様の話を受けて人生の軸を他人から自分へと少しずつ引き戻す決意をした。
頼ることを恐れない。頼られたらその分頼る。
そんなわずかな変化をくり返して私はもっと自分らしく生きられたらと思うのだ。
頼り頼られ シヨゥ @Shiyoxu
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