浄化
ラグワの背中の上で揺られていると、ノウルが振り返らずに聞いてきた。
『飯はどうする。我らは生でもいけるが、人間は肉を焼かなくては食えないだろう?』
「あ〜、どうすればいいんだろう」
『まあ、そのときに頑張るか』
「そんなにかんたんなかんじでいいの?」
『知らん』
ノウルはそんなに気にしていないみたいだけど、僕はすごく心配だった。
異世界でよくある、毒入り、食ったら気絶などなど・・・。
心配なことしか無い。ご飯食いたくないなと思っていると、
ぐうううう
僕のお腹がなった。
最悪だ。ご飯食べたくないと思ったのに・・・。
『ご飯を食べることにしましょうか』
『そうだね。俺も腹が減ってきたし』
と、ラグワがしゃがんで、ルフラが、僕の服の襟首をつかんでおろしてくれた。
ラグワが、ブラッグホールと不気味なことをつぶやくと、足元に、底の見えない穴ができた。その穴にラグワはするりと入っていった。
「え!?ラグワ!」
『大丈夫だよ、ちづき。ラグワのスキルだからさ』
慌てる僕をルフラが鼻を頬にスリスリして落ち着かせてくれた。
そうなの?それならいいんだけど・・・。
少しすると、ラグワが穴の中から出てきた。何かを咥えて。
「な、何を咥えてるの?」
『エリウールバードです。ノウルが取ってきてくれました』
ラグワの二倍もあるような、青い鳥的なのを咥えてる。なんだか、禍々しい雰囲気があって、近寄りたくない。
「僕、これ絶対に食べられないよね?」
『そりゃあな。この鳥は毒が好物だから、お前は確実に食べられない』
!?なら、なんでそんな物を出してきたの・・・。
僕は呆れて、声も出ない。
『ほら、千月くん。自分のスキルを使えばいいじゃない』
いきなり女性の声がして、ビックリする。ビビって、近くにいたレドラに抱きつく。
『あらあ、怯える姿もかわいいわあ』
「ひいっ」
語尾にハートが付きそうなほどに甘ったるい声を女性に出される。
普通に怖い。
『ごめんなさいね。私のことは後で、レドラたちに聞いてね♡でも、あなたに自分のスキルの使い方を教えてあげようと思って』
「すきる?」
「ああ、拙い言い方が可愛すぎる!!!ふーっ落ち着くのよ、私。神様としての威厳がなくなってしまうわ・・・」
いや、もう最初の登場から威厳なんてないですけどね?
「か・・・かみさま、なんですか?」
『ええ。そうよ。けれど、今は紹介できないわ。今の状態での通信は時間が限られているから、手早く伝えるわね』
「は、はい」
『では、エリウールバードに触れて、浄化と言って。できなかったら、ちゃんとしたイメージをしてから言ってみて』
いきなり、キリッとなった神様の声に促されて、やってみる。
うわあ。やだなあ。
禍々しい雰囲気をまとっている死体に近づいて、手を触れる。そして、悪いものがいなくなりますように、と思いながら、浄化と言った。
すると、死体が真っ白に光って、すぐに消えた。
『成功ね』
神様が驚きもせず、さも当たり前のように言う。
俺はびっくりしすぎて、ポカンとしてしまう。
「え?なにこれ?」
『これがあなたのスキルのうちの一つよ。浄化。あらゆるものの浄化ができる。あなたは光属性みたいね。あ、ごめんなさい。もう時間だわ。また話しましょうね。さようなら、千月くん♡』
「え?え?ちょっとまって!!!かみさま!?」
神様の声は聞こえなくなってしまった。
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