寄生型知脳彗星エビルドリーム

もぶぷりん

プロローグ 凶つ彗星エビルドリーム

 2021年8月21日日本時間22時27分。


 星が瞬く夏の夜空に、七つの閃光が奔った。

 夜空を切り裂く、星の落とし子。

 大きな爪痕を残して燃えていく瞬閃に、多くの者たちが空を見上げた。

 この日、この瞬間に以ては、幾千の人が同じ星の最後を見送った。

 その時、誰かがこう祈った。



 誰か私を、救ってください――――











                      「寄生型知能彗星エビルドリーム」










教科書にはこう書いてある。

「その日を境に、日本列島を中心とした各主要都市部に違法ドラックを資金源とする反政府組織が各地で活動を始めた。この日が歴史的な意味合いを持つといった事に関しては、その日に流れた流星を「エビルドリーム」と名付けられた事と、それらの組織が売買した薬物に同じ名前が付けられた事からして、疑いようがない。」


「初めは都市部の若年層を中心に広がった、ある種ローカライズされた組織形態であったのにも関わらず、後述する特異的な副作用が災いし、一年を持たずして我が国の統治機能は失われ、政府組織は崩壊されるに至った。」


「この事態を重く見た国連は状況の収束を図るために、国連治安委員会を発足。他の先進国家が結集し事態に介入するも状況は困窮を極め、統合的政府組織の樹立には5年の歳月を費やした。」


「その間、札幌、仙台、横浜、新潟、名古屋、大阪、福岡をそれぞれ拠点とした反政府組織が元組となって自治組織を発足(これらは後の貴族主義的階級制を生む要因ともなった)。この地方自治の過程で列島内部の陸道は廃棄されたが、各都市が海道に沿った環日本列島連合を作り上げることに成功し、時同じくして国連への参加が承認された。西暦2027年2月、新日本政府の誕生である。」


「なおここに至るまでに、人口の約八割を日本は失い、今も列島各地においては今も元は人間であるジャンキーモンスターなる怪物が闊歩している状況である。この脅威に対しては現在進行形で注力すべき課題であると見なし、2066年現在ではこれらの脅威に立ち向かうことが国民としての義務であるといえるだろう―――」




というわけで。

俺が生まれた国は。

怪物共が蔓延る地獄みたいな国だったとさ。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る