魔闘士学園の拳法使い

遊星ドナドナ

プロローグ 新一年

 春、それは新たなステージへと挑むシーズンである。特に、学生たちにとっては人生の経験値を得る貴重な時期でもある。

 ここ、カワンガ魔闘士学園でも入学式が行われていた。そしてその敷地内のジムにおいてウォーミングアップを行う者が一人。

 

「しゃあっ、ふっ」


 彼は魔力オーラをその引き締まった体に流しながら、ジャブやソバットやらの格闘技を練習していた。


「あいつ二時間ぐらい続けてるぜ」


「なかなかタフなやつだな……何年生だ?見たことない顔だが」


 その練習風景を、三人の学生が見ていた。


「制服から見るに新一年っぽいが……おい見ろよあいつのオーラ」


 そのうちの一人が練習を続ける少年を指さした。その少年は周囲に水蒸気に灰色が着いたようなモヤを纏っている。


「あいつ、無色モノのオーラだぜ!まさかあれで”お手合わせ”するんじゃないだろうな?」


「おいおいおい、もしそうならやべーぞ」


「よりによって今年はあの玉城たまき先輩だからな……」


「死ぬぜあいつ……俺たちで弔ってやるか」


 などと、三人が騒いでいる背後から一人の中背中肉の中年教師が出てきた。


「君たち、何を騒いでいるんだい?」


「あっ源武げんぶ先生!いや、あの一年の子がですねぇ、二時間ほど練習してて……」


 教師が生徒たちの視線の先を見据え、少年の姿をその眼に眼鏡越しに捉える。


「ほう、モノのオーラですか」


 そして彼は少し笑みを浮かべて、続けた。


「大したものですね、あのオーラの活用法。」


「ど……どこがっすかぁ!?」


 教師の言葉を聞いた生徒たちは驚いて、再度少年の方を振り向いた。


「だってモノにはじゃないですか!」


「確かに属性はありません。しかし、それでも肉体強化は十分にできます」


「で……ですけど……」


「それにあのオーラの錬成量、流石としか言いようがありません。かつて存在していたナイアガラの滝のように勢いよく噴出させながらも、息切れの一つもない」


 三人の生徒の心配と一人の教師の感心をよそに、少年はウォーミングアップを既に終え、ジムを後にした。





 


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