第2話
その者の一行が長者様の里に現れたのは、じめじめした梅雨の頃でした。蛾楽と言う男で、都で重きをなしたお方だそうな、と里の者たちは噂しました。
接遇の任には長者様があたられました。お屋敷にお招きしてあれこれともてなしました。最初のうちは、蛾楽も長者様を敬いへりくだっているふうでした。
けれども蛾楽は、徐々にその本性を現し始めたのです。料理がまずいの作法がなってないのと難癖をつけ、遂には法を曲げて長者様にありもしない罪を着せ、牢屋に閉じ込めてしまいました。お嬢様も下女のような扱いを受ける始末で、里の者たちも悔しがりましたがどうにもなりません。
長者様にお仕えしていた者のうちに、徳兵衛と言う若衆がありました。この度の災難以来やさぐれて、昼間からなじみの店で徳利を傾けておるような毎日でした。そこへ、同じく長者様にお仕えしている朋輩の十左衛門がやって来ました。長者様に不幸が降りかかった時にちょうど他所へ使いに行っていて、やっと戻ってきてみればこの始末。事の顛末を徳兵衛に問いただし、ため息をついたり歯ぎしりをしたりして嘆くのでありました。
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