クロス・オーバー 〜二重人格(ガチ)、己の限界を超越する〜

緑茶さん

プロローグ

 「光を堕とせ"光翼の失墜"!」


 明らかに名前負けしているただのフラッシュが、相手の視界を奪う。


 「グァァァァァァァ!!」


 怯みながらもなんとか体勢を立て直し、相対する巨人はこちらに突っ込んでくる。しかし一瞬の隙を見逃す私ではない。


 「"光拳"」


 鋼鉄のグローブを装着した拳に魔法の光を付与し、やつの心臓を貫く。世界でこのように魔法を使うのは、私(相棒)くらいのものだろう。


 「グァァァァ...ァァ...」


 断末魔をあげながら塵へと化していく巨人を後ろに見やり、黒髪をかきあげ、私考案の最高にカッコイイ勝利宣言を行う。こら!我が相棒よ。悶えてないでよく聞いておけ!


 「名も知らぬ異界の戦士よ。我が光に導かれ、安らかに眠りたまえ...」


 ...フッ。決まったな。カッコイイ詠唱と口上が私の美しさを際立たせてくれる。


 戦闘も終わったし、私の出番はここまでだ。では、次の機会にな、相棒。

 ...おい!さっさと肉体の譲渡を受け入れろ!抵抗するんじゃない!


────────────────────


 ...どうやら身体の主導権が返ってきたみたいだ。


 あぁ...恥ずかしい。モウシニタイ。


 いつものごとくパーティーメンバーに何を言われるかわかったもんじゃない!

 光学迷彩の魔法で逃げようとする俺の肩は無情にも掴まれてしまった。


 「クロス...相変わらずの豹変っぷりだったわね。ただでさえ他のパーティーにドン引きされてるんだから、そのナルシストっぷりは控えた方がいいと思うわよ...?」


 特徴的な猫耳を揺らしながら、苦笑いで声をかけてくる赤髪の猫人族の少女、ルナ。


 「クロス殿!拙者感服いたしましたぞ!

"光翼の失墜"と"光拳"でしたな!またクロス殿の名言集"クロス殿語彙録"に新たな歴史が刻まれたのですよ!」


 何の悪意も無く俺の黒歴史を伝承しようとするスキンヘッドのイケメン、ジェントル。


 「お兄さん!クロスお兄さん!」


 そして恐る恐る振り向いた俺の目の前には銀髪を後ろでまとめた少女ソフィ。彼女は目をキラキラさせながら


 「お兄さん!今日の魔法と剣技を織り交ぜた戦い、とてもカッコよかったです!

やっぱりお兄さんの強さはあの気狂いしたかのような自己顕示にあるんですね!是非私にも御教授くださいね!」


 「や゛め゛て゛く゛れ゛よ゛お゛ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 純真無垢な発言で容赦なく心の傷を抉られた俺は地面をのたうち回った。

 俺のせいじゃないのに!俺のせいじゃないのにぃぃぃぃぃ!!



 これはナルシストで厨二な神に気に入られた青年、クロス=ライオットが、二つの人格を駆使して魔王を倒すべく奮闘する物語───

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