トライ・マジェスティ
雅憂輝
港町マナカッテ
1 プロローグ
これは少し遠い未来の物語。
とある広大な大陸にて、四つの種族が産まれ、それぞれが領域を作り、そして独自に発展していった。
その中の一つ『魔王』。その種族が次の王位を選定するために行われる儀式『魔王の試練』が本日執り行われる。
『真実の花』という献上品を求めて、その魔王の試練に選ばれた十四歳の王子『シルーマ・ラメリナ』と旅の補佐にあたる十八歳の青年『ドルラーズ』。彼らが『王都マコロニア』から出立して、幾つかの日々が過ぎていた。
森羅万象を司る存在との激戦や魔法少女の隠れ里とそこで起きた原初の魔法師との死闘。
旅が始まって早々にそれっぽい展開に巻き込まれてきた彼らであったが、しかしこれまたお約束。目的の『真実の花』の行方は尻尾すら掴めてない在り様。
木漏れ日が懐くように続く緑の道。木々の合間から微かに風が忍んで安らかに吹ける。
「提案だ、ラメリナ」
道なき道を歩いてる最中。旅の補佐のドルラーズが立ち止まったため、主君であるラメリナも数歩遅れて立ち止まった。
「
彼に言われるがままに、ラメリナは懐からコンパクトデバイスを取り出した。
「はい、開きましたよ」
「近くに町や村はあるか?」
ラメリナは画面に目を凝らす。
「はい、『港町マナカッテ』。この大陸でほとんど唯一と言ってもいい海流に繋がった港町です。……漁業が盛んとのことですが、人口を見る限り残った町人たちでやりくりしてる感じでしょう。俗に言う田舎町です」
「そうか。田舎は田舎でも今はこのような便利な時代だ。何も特別な力を介さなくても遠くの人と会話も出来るし、どこを廻るにも金さえあれば何とかなる。そのマナカッテとやらも例に漏れず、人の集まる都会に続く交通網が伸びているはずだ」
「一応、バスの情報が出てきました。しかし、時刻表などといった詳細までは載っていません」
そうか。と言ってドルラーズは顎先に指を添える。
「行って確かめるが無難か。提案だ、ラメリナ。道なき道を進む旅路も実にしている感じがして乙なものだ。しかし、そのような自己満足のまま見つかるほど真実の花は柔な代物ではないはず。そこで一旦マナカッテでバスに乗り、人の集まる都会へと向かう。どうだ?」
その提案に、ラメリナはほとんど迷わずに言葉を返す。
「確かに都会であれば情報も掴みやすいでしょう。分かりました、ドルラーズさん。あなたの提案に賛同します」
「よし! そうと決まれば港町マナカッテに向かおう」
こうして、次なる彼らの目的地が決まったのであった。
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