第4話 秘密の会話
音がした。翔さんが戻ってきた。眠っているお姉ちゃんを見ると優しそうに微笑んだ。
「ずいぶん遅かったですね。お体が冷えたのですか?」
「そうかも」
翔さんは冷静にそういった。だがそれは嘘であるとすぐにわかる。部屋を暖かくして、コーヒーも飲んでいて、体が冷えるはずがない。冷静に装っているが、緊張していたのかもしれない。
「翔さん、なんでお姉ちゃんに『かわいい』って言ってあげないんですか?」
翔さんは急に聞かれ驚いているようだった。
「急にどうしたの?理香ちゃん」
「お姉ちゃんが愚痴っていたんです。『翔がかわいいって言ってくれない』って。お姉ちゃんはきれい系ですけど、かわいいって言ってほしいんですよ、翔さんに」
「そうだったんだ」
私は含んだ笑みをしながらこう言った。
「でも翔さん。私、翔さんがお姉ちゃんにかわいいって言わないの分かっちゃいました」
「くだらないことだよ。あとそれ秘密ね」
「わかりました。でも翔さんにとってはそうかもしれないですけど、お姉ちゃんにとっては大事なことなんです。だから言ってあげてください。言わない理由もお姉ちゃんが鈍感だから気づかないだけです。」
翔さんは照れ臭そうに
「それに救われているんだけどな。もし、知られたらいいように使われそうだ。」
そんな会話をしているとお姉ちゃんが動いてきた。お姉ちゃんの知らない私と翔さんの秘密の会話もここで終わった。
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