第11話
死について考える事は多々あった。それは誰かを殺すのも自ら死ぬのも両方含まれていて、想像の中では容易に実行できるのだった。しかし、いずれにしてもその先、つまりは殺した先、死んだ先については考えが至らずすぐに思考が霧散してしまう。人間は死んだ後どうなるのか、どこへ行くのか、てんで分からない。もしかしたら、いや、恐らくほぼ確実に、生命活動を終えた生物はただの無となり、認識もできず、認知もできない状態となるのだろう。無意識という未知に沈み、また、無意識という事も意識できず、何もなく永遠に時間が過ぎていくのかもしれない。虚無と、無限。
それはあまりに途方もないもので身に余るものだった。いってみれば無意味な仮定の妄想であって、それに気がつくと急に馬鹿馬鹿しくなり、僕はすぐに別の事を考えてしまうのだった。
だが、この頃はずっと死が身近にあり、行き詰まるとすぐに悲惨な末路が頭に浮かぶのである。縄に吊るされる、沖合へ向かって歩いていく、ガソリンを巻いてマッチに火をつけようとする、そんな自分を。そこから更に飛躍すると、知った風に何かを語るタレントや、侮蔑したような目を向ける女を殺す算段をしていた。彼ら、彼女らが僕に対して何をしたわけでもないが、僕はそういった人間がやはり許せなかった。縁もゆかりもない人間を殺してやりたいと思った。その時もまさに、そんな気持ちだった。
やり場のないフラストレーションを持て余しじっと布団に入っていると、陽が高く上がり、差し込む光が目を覆う。時計は正午に近かった。僕は朝方からずっと横たわっていた事に焦燥感を覚え酒瓶を手にするも中身はない。絶望に嗚咽し、また布団から出る機会を失う。何もできず、倒れるばかりで、どうしようもない。
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