第6話
貯えはあったが心許なく、また、無職というのも不安だった。仕事を探す他なかった。
景気は依然芳しくない。どこも顔色悪く、採用の声はかからなかった。生きた心地がしないまま
いっそ自死も考えたが、死ぬとなると並々ならない命への執着が思考を捕らえて離さず、すぐに無理だと嘆き、また咽び泣いた。それまで死んだ方がマシだと何度も考えてきたはずなのに、いざその気になると竦み怯え、どうにもならない。死を直視すると人はこんなにも軟弱になるものかと、暗闇の中で思った。
そんな折に、一つの電話があった。辞めた工場の上長だった。
必死に現状を訴え助けを乞うと、彼は「分かった」と言って、しばらく受話器を離れた。無言の時間。僕の心音は安定せず、息苦しく、危うさに涙が滲んだ。
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