ノット・シード(読み切り)

鷹山

第一章 入学試験編

第1話 発芽をせぬ少年

 子供が種を植え付けられた状態で生まれてくる町“シード・タウン”

 この種は10歳になると発芽し、その者に固有能力“シード”を与える

 しかし10歳を超えてもシードを得られなかった少年がいた。

「やっべえ。めっちゃおなかすいたな」

 紫の髪に黄色の瞳のこの少年、名をエキザカムをいう。

 エキザカムは10歳になっても特に目立ったシードが発芽しなかった。

 能力の種類によってでしか就職のできないシード・タウンでは価値のないと思ったエキザカムの親はエキザカムが11歳の時に捨てた。

 そこから現在15歳。何とか生きてきたエキザカムは親を怨むわけではなく、むしろ自分に自由を与えてくれたことに感謝していた。

 そう彼は……“究極のポジティブ”だった。

「でもあれだなあ……。さすがにバイトじゃ金が尽きてきたなあ」

 エキザカムはなるべくシードを使わないバイトを選び働いていた。

 しかしそうなると当然給料も低い。

 そんな金に困ってるエキザカムの下に一枚のビラがひらりと滑り落ちてきた。

「なんだこれ??」

 エキザカムは不審そうに思いながらもそのビラを拾った。

 そこにはこう記載されていた……

 

 学園フラワー・インサイド 入学者募集中!!!

 入学金 無料。 

 卒業時に学年一位だったものは学校推薦で自由に永年就職可能!!!!

 また再就職も自由!!!

 入学試験あり。

 

「ななななんだこれ~~~!!! やっぱ俺ってついてるな!!!」

 エキザカムはその紙を持つと早速家に帰り入学手続きの準備を行った。


 しかしこれがエキザカムを数奇な運命に導くことをまだ誰も知らない……。


 そして入学試験当日——

 フラワー・インサイドの中央の広場には多くの入学志願者が集まっていた。

「すっげえ人……。でも俺は絶対合格してやるぞ!!!」

 なぜか根拠のない自信で溢れているエキザカムはあることに気づく。

(みんな、体が細いなあ……。)

 エキザカムはシードがない分体力や筋力で補ってきた。そのため他の者に比べ筋肉が目立ち、注目を浴びていた。

「あの人……筋肉すごすぎないか??すごいシードを使うのだろうか」

「だとしたらあたし勝てる気がしないんですけど……」

 他の志願者は意味のない憶測をエキザカムに向けて繰り広げていた。


「静粛に!!!」

 一番前に立っていた30代ほどの教員用衣服を着た男がそういうと、ざわざわと揺らめいていた空気が一瞬で固まった。

(すげえ、あれがこの学校の教員か。迫力あるなぁ……)

「これより入学試験を開始する。入学試験の内容はことだ」


(へ????? ……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!??????)


 

 

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