超能力一家☆天道家の人々。

すぎのこしわす

天道一家の超能力。

第1話 沙夜、2歳児に負ける。

 バタンッ! バタバタッ! 

 朝から、騒音で目が覚めた。

「うるさいなあ」

 目覚まし時計は、五時を指している。

 まだ日も出ていないし、寒い。

 布団から出たくなかったけど――気になって部屋を出る。ふわあ、とあくびしながら、あたしは階段を下りる。

 ガサ、ゴソ。

 一瞬、ドロボウかと思ったらママだった。

「ママ、何があったの?」

 階段下の収納庫をのぞいている、ママに聞いた。

星夜せいやがどこにもいないの。行方不明なのよ」

 ママと星夜が寝ている、リビングの奥の和室に行くと、星夜の掛け布団がべろんとめくれていた。

「ママを驚かそうと、押し入れの中にでも隠れてるんでしょっ」

 あたしは、勢いつけてふすまを開けた。

 いないか。

「まさか……自分で、カギ開けて出てっちゃったとか?」

 ママは、首を横にふった。

「玄関のカギは、星夜じゃとどかないもの。窓だって、二重ロックかけているんだから、星夜じゃかんたんに開けられやしないわ」

 ママは、顔をしかめて長いため息をついた。

「それに、いくら『透視とうし』しても、家にも外にもどこにもいない。『透視』で見ぬけないほど、かなり遠くにいる可能性が高いのよ」

「それってまさか、超」

「しっ」とママがさえぎった。

千夜ちよおばあちゃんからよ」

「千夜ばあ?」

 ママは、黙ってうなずくと目をとじた。

 千夜ばあは、うちから三.五キロほど離れた場所で、ママの弟家族と一緒に住んでいる。

 そう――千夜ばあは、『テレパシー』の超能力で、ママの心を通じて会話をしているのだ。

「えっ⁉ パパのところに⁉」

 突然、ママはとんきょうな声で驚いた。

 家電が鳴り響いて、ママは慌てて受話器を取る。

「もしもし? まあ! 星夜!」

 あんどするママの声の向こうで、受話器越しに聞こえてくる、星夜のむじゃきな声。

「星夜、今、にいるのね? ああ、良かったわ無事で」

 ――フロリダ⁉

 ホッとするママの隣で、あたしは口をあんぐり開けたまま、かたまっていた。

だって、星夜はパパの出張先、アメリカのフロリダまで『瞬間移動しゅんかんいどう』したんだから……。

 あたしは、へなへなと座りこんだ。ほっとしたのもそうだけど、二歳の星夜に、先をこされたことが、大大大ショック!

 これが、我が弟天道星夜、二歳にして『瞬間移動』の超能力に目覚めた日の出来事だった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る