山道

第1話

 年が一つ上の姉がいます。うちらは仲の良い姉妹です。


 姉は昔から体を動かすことが好きな人で、部活動のサッカーでスライディングした時に作った傷跡がまだ左の二の腕に残っていたりするくらいです。

 しかし実は怖がりで、内気なところがあったりします。


 だからなのでしょうか、正反対のインテリ風の人にかれるようなんです。




 そんな姉に起きた出来事です。


 姉は社会人一年目にして、会社への不満が溜まりに溜まっていました。ストレス発散によくパソコンでゲームをしていました。


 うちは詳しくないんですが、姉のゲームにはチャット機能というものがあって、ゲームで対戦した人や仲間になった人と会話できるらしいんです。


 そんな感じでチャット機能を使っていたら、姉曰く「運命の人」と出会ったそうです。


 「運命の人」は、声を聞いたわけではないようですが言葉遣いからして同年代の男性で、とても知的で博識で、姉がぽろっと零した愚痴も拾い上げてくれるようでした。




 数十回その人とゲーム内でお喋りをして、とうとう「リアルで会おう」ということになったそうです。

 その人が徒歩一時間圏内に住んでいることが判明したからです。


 彼は大学院生で、大学名も本名も明かしてくれたからきっと誠実な人だと姉は思い込みました。




「お姉ちゃん、やめときなよ」とうちがいくら引き留めても聞きません。


 本心では姉についていきたいくらいでした。


 本当に、こっそりついていくことができたらどんなにいいかと思いますが、うちは数年前に足を怪我して車椅子での生活だったので到底無理でした。


 うちは玄関で出掛ける姉を見送りました。


 だから、ここから先は姉の話をつなぎ合わせて知ったことです。





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