俺もいつかは魔王様

もるっさん

俺もいつかは魔王様

3の倍数の年月の節目にカップルは別れやすくなるというのは本当のことだろうか?

お互いに遠慮は無くなるけどいい感じに付き合えていると思うが。


「ケンタがランチに本格エビパエリアなんて注文するから遊園地が遅くなっちゃったんだからね」

「ほかに選べるメニューがなかっただろ?」

「今日は せっかくのデートなんだからね。カレーでよかったじゃない?あなたって自分が中心に地球が回っていると思ってない?」


彼女のさくらは 遠慮がなさすぎるかもしれない。

俺をせかすように後ろを向いたまま横断歩道を渡り出した。


そのとき1台のトラックが。

ブーブー! ブーブー!


キャ!!


俺は目を閉じた。目の前が真っ暗になった。

どうか・・どうか・・神様!


あれ? 何も聞こえないぞ・・

暗いのはわかる・・でも なぜ 音がない。


「ついに来たか。これで俺は。。」

「来てしまいましたね。」

「イヤだ!オレはイヤだ!うぅ・・」

「泣くなんて サイテーね・・」


おお。ようやく音が戻ってきた。。目を開かなくちゃ。


目を開くとそこには古びた喫茶店のような木製の床とハロウィンのドラキュラのようなコスプレをした5人組がいた。

俺を入れて6人か、いいやそれどころじゃない。

「あんたたち 何でコスプレしてるのか知らないけど俺の彼女が事故にあったんだ ここはどこなんだ??」


しかし ケンタが話しかけても聞いてもらえず 5人は慌てるようにワインの入ったグラスを用意し始めた。


乾杯の準備なのか? 何の乾杯だ?

だけど 5人分のグラスを用意されたけど俺の分は用意してくれない。

「あの 俺の分は?」

「お前も来るのか? ワインが飲みたかったら隣の部屋に行け。そこにグラスとワインがあるはずだ」


グラスを片手に悠々と5人は骨の装飾が施された扉の部屋に入って行った。

「では 参ろうぞ」


ちょっと まってくれよ。

ワインなんて別に飲みたいわけじゃない。俺も一緒に部屋に入る。

部屋の中では乾杯のあとにリーダーらしき男を取り囲み4人は泣いていた。


シクシク・・・

うわぁぁぁん

ケインさん。。。

イヤだぁ! 俺はイヤだ!


「おいおい 泣くな。それからケインさんはもう止めてくれよ。デスアボス。オレの名前は魔王デスアボスだ。みんなが付けてくれた魔王の名だ」


満足げにうなずくデスアボスと4人はさらに涙が止まらなくなってしまったようだ。

なんて 変な人たちなんだろう?

コスプレ好きにデスアボスだなんてヤバい人たちの集まりに来てしまったようだ。 

「あの! 帰りたいので帰ってもいいですか?」

4人はこちらを睨んできた。言葉を間違えたのかもしれない。


「まあ 睨まずとも よいであろう。私も来たばかりの頃は同じようなものだった。・・・そうか名前はケンタか。立派な魔王を目指せよ。がははは」


みんなはデスアボスさんを褒めたたえた。

「がははは、は最高です。魔王っぽかったです」

「しびれちゃいますぅ~さすが 魔王様ですぅ~」


デスアボスは ワインをグイっと一気に飲み干した。

そして 魔王の玉座に座る。


「それでは 行ってくる。みなも立派な魔王に!」


シクシク・・・


うわぁぁぁん


デスアボスが イスに座ると部屋の中につむじ風が起きて闇の光と稲妻がイスに集まると消えてしまった。

「手品か? お前らは何者なんだ?」

「異世界転移だ。何を言っているんだNO6? ちなみにオレはNO2のジョンだ」

「あら ケインが居なくなったからジョンはNO1よ。改めまして私がNO2のミリーよ」

「君たちケンタが混乱するじゃないか?後でボクが説明してあげよう。ボクはNO3のボビーさ よろしく」

「お前雑YO♪ オレ解放♪ お前介抱?俺はしねぇ~♪イェー♪ 俺様がNO4のジミーだ」


挨拶が終わるなりに 部屋を出ていくとみんなは食事を始めてしまった。

「俺は 帰りたいんだ。ここがどこなのか教えてくれ?彼女が大変なんだ!」

「まあ 最初はそういう反応になるわな ははは」

「ねえ それより 魔王になるならゴリマッチョのほうがいいのかしら?」


全然話を聞いてくれない。

窓の外は暗くなっていて俺はもしかすると眠らされていたのかもしれない。

「中2病どもらが! 俺は出てくわ!!」


ガチャ


ドアノブを握ったときにNO2のミリーがホークで窓を指さした。

「出ていくのは勝手だけど夜の魔獣は強いわよ」

外の様子をよく見ると さっきまでは窓越しなので大きな樹木かと思っていた物が一瞬だけどうごめく生き物に見えた。

「ボクもここから出ようとしたことがあるけど、、結局空間からは出ることはできないよ。」

「やめとけYO」


ジョンがワインのボトルを俺の方に向ける

「外は暗い。そんな服装でどうやって森を抜けるつもりだ?」


俺は今晩一晩だけ止まっていく事にした。

部屋は姿が消えたデスアボスの使っていた部屋を与えられている。

整理整頓がされており、机には「目指せ 魔王」と彫られていた。

「バス停すらわからないんだ。今は我慢だ・・」


・・次の日・・

「起床!」の声とドラムの音に叩き起こされて広場に集まる様にと指示をされた。

広場に出ていくと 新しくNO1になったジョンが中心となってラジオ体操のようにずらりと並ぶ。

そして「ま! ど! う! はぁ!!」と連呼をしながらカッコいいポージングを取っていた。

恥ずかしいラジオ体操にしか見えない。

「では もう一度行くぞ! 魔導波!はぁ!」

みんなもそれに続く

魔導波!

魔導波!

魔導波だYO!


ジョンの激が飛ぶ

「そこ!手の角度! それから ほら ケンタも一緒にやるんだ! はぁ」


なんで 俺までやらなきゃいけないんだ?


「俺は勝手にさせてもらうぜ!」


広場を横切って 森に入った

けど建物らしいものはないし洞窟や湖があってジャングルのように生い茂る森ばかりだ。

だけど 最後の茂みをかき分けたときに目の前に現れたのは・・「黒い壁」

触ることはできるけど黒いだけで その先に進むことは不可能なようだった。


ギュルルル・・

生暖かい風と 心地悪い声に後ろを振り返ると


うわぁぁぁ!!


そこには よだれを垂らした魔獣がいた。

「来るな!やめろ!!」


大声で叫び 地面に落ちている石を投げつけ枝を拾って威嚇した。

だけど魔獣は 気にも止めずにじりじりと迫ってくる。後ろは壁で逃げられない・・もうダメだ


ギュルルル・・


「魔導波!」

「魔導波!」


魔獣に紫色の稲妻の玉がヒットしていく

そして魔獣は力尽きた。


「楽勝だったわ」

「俺の魔導、お前とまどうぉ~イェ~♪」

「ほんと 無茶したね。だからこの空間からは出られないっていっただろ?さあ 帰ろう」


リーダーのジョンは来なかったけど3人は俺を助けに来てくれた。

そして彼らの力は本物だった。

俺は館に帰ると ジョンに事情を話してラジオ体操に参加させてもらう事にした。

それから2カ月がたったころジミーにお使いを頼まれた。


「ジョンを呼んできてくれYO ジョンは洞窟だYO」


ジョンはもうじき異世界へ旅立つ頃なので最近は洞窟で一人修行を積むことが多くなっていた。

俺は洞窟へ向う。

来た時とは違って修行の成果で感覚が研ぎ澄まされていて体も軽い。

すぐに洞窟にたどり着いて中の様子を覗いてみると そこには瞑想をするジョンの姿があった。


ジョンは立ち上がると 魔導派の構えに入った。

ピリピリとした空気が肌を刺すようだ・・。

構えたコブシが突き出される


「デスラストキャノン!!!」


視界は白く染まり。。目を開けることができない


ドガァァァァン


恐る恐るジョンの方を見ると 洞窟は消し飛び

放心状態でたたずむジョンの姿があった。


これなら勝てる。

俺はジョンに駆け寄るとジョンを褒めたたえた

「すごいじゃないか!これなら 勇者だって倒せるぜ。 ははは」

常識外れのすごい必殺技だった。

だけど ジョンの顔は浮かない

「これではダメだ」


何がダメなんだ?

「なぜ?」

「お前の言葉の言う通りだ。これで勇者を倒すことはできる。それどころか殺してしまうだろ。この技は封印せねばならぬ」


このあと本当に特殊な方法で技を封印してしまった。

このまま異世界に行けばジョンは 勇者に倒されてしまうだろう。 

だけど 短い間でも一緒に過ごしたジョンを死なせるつもりはない。

俺はジョンを呼び出した。


「勝負だジョン! 俺が勝ったら技の封印を解いて異世界に行くんだ。死ぬなジョン!」

「いいだろう。オレに勝てたなら その望みを叶えてやろう。勝負だ!」


結果は言わずもがなだった。 ジョンの重い一撃が深く腹をえぐりこんできた。

あれ? 俺も強くなっているはずなのにこれが魔王の力なのか・・・。


ぐはぁ。。。ゲホゲホ・・。

うずくまる俺の肩にジョンは手を置いた

「ケンタよ お前は魔王としての見所があるヤツだと思っていたが、思っていたよりも向かないのかもしれない。ただ これだけは言わせてくれ。。ありがとう」


ジョンは館の方へ去っていった。


とある日 

ミリーはケーキを焼き。

ジミーはラップを披露した。

俺たちはジョンにデスガーゴイルという魔王の名前をプレゼントした。

ジョンの目から涙がこぼれたのは言うまでもない。

だけど 名前を送ったその日に6人目の魔王候補が召喚された。


「ついに 俺の出番がやってきたか」

ジョンは立ち上がり魔王のイスのある部屋へ入る。


「誇りある魔王になってくるぞ がははは」


「ジョ・・いいえ デスガーゴイル!」

「行かないでくれ!」

「うわぁぁぁ!!」


「さらばだ!」


ジョンは 行ってしまった。後には何も残らない。


部屋は奇麗に整頓もされており、NO6がそこに住むことになった。

「ケンタさん よろしくお願いします。グラムと言います。頑張ります」

グラムは 聞き分けがよく俺は初めて後輩から尊敬を受けていると感じた。


それから2カ月が経とうとしていたころ、俺はジョンのときのようにミリーとも勝負をした。


「勇者に殺される魔王なんて馬鹿げている」


俺は勇者を倒すつもりだし殺されるつもりはない。

だけど 結果は惨敗。

「魔王の悪口は許さないわよ」


惨敗どころかグラムが助け起こしに来てくれなかったら俺は土に帰っていたかもしれなかった。

戦いの傷が癒えた頃6人目の魔王候補が現れた。


魔王のイスの前でミリーは

「ケンタ!」

俺は ハグをされて そのまま熱いキスをされた。


「私は 魔王なんだからね! 欲しい物は奪うのよ!だけど バイバイ。バイバイみんな!!」

ミリーはイスに座ると 異世界へ行ってしまった。


魔王のイスに涙が残った。

俺は浮気をしてしまった・・浮気というのはこんな気持ちになるものなのか?

NO6番は女性だった。部屋は女性が使っていた部屋と言うこともあるけど でも女性が来てくれてよかったと思う。


それから1年ぐらいたって 俺を慕ってくれる後輩も増えて俺はNO1のリーダーになった。

厳しい事も言うことがあった。

「ほら! 属性を考えろ 確りやれ!」

「はい ケンタさん」


レジャーをすることもあったっけ。

「今日はみんなで バーベキューをするぞ」


「やったー!」

「うれしいぃ~」

「やっほー!」


そしてついに、俺の旅立ちの日がやってきた。


「では 行ってくる」


シクシクとみんなが泣いている。

こいつらは本当に可愛い奴らだ。


そんなに泣かないでくれよ。


「行かないでください!」

「うわぁぁぁ!!」


やれやれキリがない。俺は みんなを抱きしめた。

「みんな 立派な魔王になるんだぞ」


俺は 魔王のイスに座った。

そのとき不意に思うことがあった。

立派な魔王に。。魔王。ふふふ そうか。。そうだな。


「みんな! 俺は立派な魔王になってくるぞ!!」


俺はこのイスで旅立った魔王候補たちの気持ちが分かった。

俺は魔王じゃなくてはいけない。

立派な態度で魔王としてふるまい そして勇者に倒される。

そうじゃなかったら 今までの俺たちは?そして こいつらは何のために・・・わからないじゃないか!


イスはいつものように 魔王を異世界へと連れて行き後には何も残らなかった。


・・・・・

目を開けると見慣れたアスファルトの地面がある。


ブーブー!!!



キャ!! 



え?ここは1年前の地球の事故の瞬間だ。


「デス ラストキャノン!!」




ズドドドドン!



トラックは消し飛び、遊園地の入り口までガレキの道が出来上がった。


彼女は無事なようだ。


「さくらよ。無事か?俺の手を掴むがよいぞ!さあ 遊園地へまいろうぞ。がはは」


「あの?・・ あなたは もしかして ケンタ?」

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