第26首 貞信公_男

小倉山 峰のもみぢ葉心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ


 嗚呼……

 なんて儚いのだ……

 

 こんなにも脆い存在ならば、もはや何も信じられぬ

 

 赤く煌めく石は、いずれ大地の一部となり

 ルビーと名付けられた過去とともに、塵埃に埋もれる

 

 名を呼ぶ人がいなければ、存在すらしない

 なんて儚いのだ……

 

 存在と名はどちらが先に生を受けるのだろうか

 

 かつて彼女の指を彩ったルビーの指輪は

 おさまるべき指をなくして、今やその名を冠することを許されない

 

 儚い……

 

 いつか全ての人間に名を忘れ去られたとき

 その存在は初めて昇華される

 

 しかし、私は……

 私は彼女の存在を、そんな儚い名前などというものに委せることはできない

 

 彼女の細く美しい指を食む

 

 すでに侵食は始まっている

 なんて儚いのだ……

 

 どうか……

 どうか、もうしばらく……

 私の中で生きてくれ

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