第21首 素性法師_御伽噺

今来むと 言ひしばかりに長月の 有明の月を 待ち出でつるかな

 

 ひょっとしたら、ずっと来なければいいのにと思っているのかもしれない


 来なければ、あらゆる可能性を持ち続けられるから

 

 来て欲しい、だけどまだ来ないという今、かえって万能感に浸れるのも事実

 

 明日は来るかもしれないという期待は、今日は来ないという安堵

 

 変化が怖い?

 

 そんなことはない

 

 怖いと思うとすれば、それはきっと

 

 その時を迎えた瞬間にそれ以外の可能性が消えてなくなることだ

 

 いつだって、願うことはそれ以外の可能性を積極的に放棄すること

 

 友達と暮らしていることだって、そうしたかったから

 

 それまでは、お城でどのよう誰と暮らすか何百通りもの可能性があった

 

 早く来て欲しい、とそれだけを願える日が来ればいい

 

 七人の友達と暮らしたい

 

 おばあさんがくれた林檎を食べたいと、何の迷いもなく思えた時のように

 

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