第44話 ひとときの安らぎ

 綺夜羅たちはわりとすぐ近くの旅館を咲薇に案内されていた。


『ここ友達んとこでね、昔からよく知ってんねん。あたしの友達や言うたら喜んでサービスしてくれるで』


『本当か!?ありがとよ、咲薇。助かるぜ!』


 大きくもなく小さくもなく一般的なレベルの旅館なので、綺夜羅たちも安心して入っていくことができた。


 入り口の所でここで働いているらしき女性が立っている。


『あらサクちゃん。待っとったよ。まぁみなさん可愛い子揃いで、コンパニオンでもしとんのか?』


『ママ、あたしら学生やで。紹介するよ。神奈川の友達で綺夜羅とその仲間たちや。大阪旅行やゆーて来とんのに宿も予約せんと飛びこみで探そうとしとったらしいねん。悪いけど、何日か面倒見たってね』


『はいはい。そしたらまず部屋案内しよか』


 綺夜羅とその仲間たちは部屋まで案内されると荷物を置き、全員一斉に倒れこんだ。


『いや~助かった~。一時はどうなるかと思ったぜ。』


『お腹空いたでしょ?ちょっと休んだらご飯にする?それとも先お風呂入る?ビールは飲める?まぁ色々あった方がえぇか。どーする?』


 咲薇はまるで女将さんかのように働いている。


『サクちゃん、えぇからあんたもせっかくお友達来てくれとんのやから一緒にゆっくりしてきーや』


『あ、あたしは手伝うよ』


『なんだよ咲薇。女将さんいいって言ってくれてんだから一緒に泊まんべーよ』


『ほら、友達も言うてるやないの。いっつも手伝ってくれとんのやから遠慮せんでえぇよ』


 だが咲薇は戸惑っているようだ。


『…あたし、おってもえぇんか?』


『あったりめーだろ?この前はゆっくりできなかったからな。今日はとことん語ろうぜ』


 綺夜羅に言われて他のメンバーを見回すと、みんな笑ってうなずいてくれた。


『なんや…嬉しいやんか』


 咲薇はちょっぴり恥ずかしそうだった。こんな風に受け入れてもらえるなんて思ってもいなかったのだ。


『よっしゃ!風呂入ってその後宴会だな。咲薇、風呂入ろうぜ』


 ということでチーム綺夜羅と咲薇はまず露天風呂を楽しんだ。(掠と数はサウナで我慢比べ)


 夜空を見上げゆっくりとつかっているとめんどくさいことなど全て忘れられてしまいそうだが、叶泰の命日や萼とのいざこざは明日確実にやってくる。


 強がっていても、本当は誰かを頼りたかったり誰かに聞いてほしい。だか今咲薇にはそんなことを話せる友達がいない。


 だから綺夜羅たちとこんな風に過ごせていることがとても心の支えになった。

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