第42話 迷子と舞妓

『ねぇ…玲ちゃん?本当にこっちであってるの?』


 もうすぐ日が暮れるという時、愛羽たちはまだ歩いていた。


 建物や街からは離れ、普通に考えてどう見てもありえなさそうな所にいた。


『おっかしいなぁ、絶対こっちなんだけどな。方角は間違いないんだけどなぁ~』


 玲璃は自分の頭の中にインプットした地図を何度も何度も思い返し道をにらんでいた。


 かなりバスで移動し降りてからも当分歩いたがそこがどこなのかは誰も分かっていなかった。ここまでに何度か携帯の地図アプリで現在地と目的地の確認をしようとしたのだが


『それじゃあ今度こそあたし道も覚えられねーバカになっちゃうじゃねぇか!ダメだ!絶対大丈夫だからそれだけはやめてくれ!』


 と玲璃が言い張りみんなの携帯を取り上げてしまったのだ。玲璃はもう引き下がれないのでとことん自分の頭の中の地図を頼りに先頭を歩いていくが、だが事態はとうとう収集のつかない所まで来ているらしかった。


『ねぇお願い、ちょっと止まって会議しよ。日が暮れてからじゃどうにもなんないから』


 蓮華の意見にみんな賛成し道に座りこんだ。そこでとりあえずタバコに火をつけると人が1人歩いてくる。


『着物着てるね。今日この辺お祭りなのかな?きっとこの辺の人だよね』


 愛羽がその着物の女性に話しかけにいった。


『あ、あの、すいません』


『what's?』


 すると英語が返ってきて相手の顔を見ると着物の女性はとても綺麗な外人だった。


 紅蓮の鮮やかな着物に真っ白い肌と白銀の髪。そして見たこともないような灰色の瞳。愛羽は一瞬で目を奪われていた。


『どうしよう。あたし英語とか喋れないんだけど…』


 困った愛羽が蘭菜なら英語も喋れるんじゃないかと助けを求めようとすると意外な言葉が返ってきた。


『ドーカシマシタカ?』


『…あれ!?日本語分かるんですか!?』


『ハイ、スコシナラワカリマース』


 片言の日本語で外人が言うので愛羽は安心して質問した。


『あの、ここはどこですか?』


 普通に生きていればおそらく一生に1度も使わないであろう言葉だ。するとその横から玲璃も会話に入ってきた。


『この辺に大阪ロイヤルホテルってないすか?』


 しかしその時衝撃の事実が明らかになる。


『oh、OーSAKA?ココハキョウトデスヨ?』


 6人は目の前が真っ暗になった。同時に玲璃に周りから冷たい視線が送られた。


『は?…やべぇ…どうしよう…とりあえず大阪戻んなきゃ!』


 玲璃が頭を抱えていると外人がそれを見て言った。


『イマカラオオサカナンテモドッテモシカタナイ。ワタシガホテルツレテッテアゲルヨ』


 それを聞いて6人の目に光が戻った。


『えっ?えっ?本当ですか?ありがとうございます!』


 愛羽たちはそのキュートな外人についていくことにした。

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