第25話 罪と罰

 この日の来客は松本だけではなかった。


 バイトが終わり咲薇が帰ろうとすると咲薇の単車が停まっている駐輪場で1人の女が待ち伏せしていた。


 髪はまるでキャバクラ嬢のように巻きたい放題巻かれ、まるでお姫様みたいにセットされ頭のてっぺんに花の可愛いやつをつけている。


 化粧が濃く、肩を出し下着がギリギリと言うよりは半分位見せるようないかにもいやらしい格好をしている。


 彼女にしてみればそれはファッションの内で、世のほとんどの男たちは彼女のような女を見て発情する。彼女はそれが分かっていて、だからそういう格好をする。


 咲薇が愛羽たちに合わないと言っていた、大阪暴走侍の今の総長椿原萼(つばきばらうてな)が咲薇の帰りを待っていた。


『なんや、なんか用?』


『あぁ。お前はウチのチーム破門や』


 咲薇はそんな話かとふっと息をついた。


『破門で結構や。話はそれだけか?』


『あんたについてはケジメを取ってやめさせることにする』


『は?なんで破門にされた上にケジメなんて取られなあかんの?ふざけんといて』


『ふざけてへん。これは決定事項や。そしてその日にちやけどな、23日に決めたわ』


『なんやて!?』


 23日は叶泰の命日である。


『ふふ。なんや、ずいぶん嬉しそうやないか。優しいやろ?大好きな人の命日にケジメ取られるなんてえぇ設定やんなぁ』


『萼、お前えぇ加減にせぇよ』


 さすがの咲薇もこれには怒りをあらわにした。


『お前こそえぇ加減にせぇや。死んだ奴の単車なんぞいつまでも乗り回しくさりよって。あたしらがしっかりケジメ取ったるから安心して狐に刺されてくれてえぇんやで』


 椿原萼は勝ち誇った顔をした。咲薇は何よりもその卑劣さに頭にきていた。


『えぇな、咲薇。23日夜12時にいつもの場所や。逃げんなや?ま、逃げてもムダやけどな』


『誰が逃げるか!』


 そこまで告げて椿原は行ってしまった。


『くそっ…』


 好きだった男がケジメを取られ謎の死を遂げたその日に自分もケジメを取られることが決まってしまった。


 これは罰?叶泰を愛してしまったことへの報いなのだろうか。


 もしそうだとしたら、叶泰はなんの罪で死んでしまったのだろう。


 咲薇は星の見えない夜空をしばらく見上げていた。

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