第17話 レーススタート
(マジか。こりゃ想像以上だぜ。あの750を軽々と乗りこなすことといい、こいつのコーナーに突っこむ時のスピードといい、さっきまで女の子✕2してたのが嘘にしか思えねぇ)
綺夜羅も決して手を抜いて走っている訳ではなかったが、相手が自分たちより大きいエンジンの750でこの道を知り尽くしていて、自分が初めてだということを頭に置いて差し引いても、瞬の走る姿はまるで空を舞うハヤブサのようで綺夜羅は今の所テールランプを追いかけるのがやっとだ。
それにも驚いたが後ろの愛羽だ。この娘もさっきからずっと綺夜羅の後ろを走っているが明らかな余裕を見せている。
(こいつ…あの邪魔くせぇロケットと三段くっつけてよくあんな走れるな。ハンドルもあんな長ぇのによ…)
綺夜羅が後ろをチラ見すると愛羽は風にスカートをなびかせパンツを見せながらニッコリと笑ってみせた。
(へっ…あぁ、悪かったよ。お前のこともだいぶ舐めてたみたいだ)
気を取り直し改めて綺夜羅は本気で走ることにした。
「ブォン!」
気持ちよくアクセルを吹かすとギアを上げ、CBRのタンクをバシッと叩くと気合いを入れた。
『行くぜ!』
(あぁ…瞬ちゃんのオッパイも大きかったなぁ~。はぁ、この前まであんな人殺しみたいだったのに、あんなに可愛くなっちゃって…綺夜羅ちゃんも楽しそうでよかった。)
目の前で抜きつ抜かれつしている2人を見て愛羽は嬉しくなっていった。
『よぉーし、あたしもオッパイじゃ勝てないけど単車じゃ負けないからね!』
愛羽も前のレースに参戦しようとすると、ミラーに映る影に気づいた。
『あれ?』
ここまでまだ誰ともすれ違っておらず、途中合流もなければ人もいなかった。
ということは、純粋に後ろから詰めてきたことになる。自分たちが決して遅いスピードで走っていた訳ではないことから、後ろの単車は相当飛ばしてきたことになる。
『誰だろう…』
愛羽は後ろの人物に興味がいってしまった。
(月下さん、なかなかやるね。ピッタリくっついて少しずつ詰め寄ってきてる。きっと前に出る時を見計らってるんだ。目で見なくても気配で感じられる。いいね、たまには追われるのも悪くない。ゾクゾクする。暁さんもまだまだ全然本気じゃないみたい。)
まだ泪がいた頃は毎週のようにここへ走りに来ていた。なので当然コースは知り尽くしている。その中でこの750相手に400エンジンの単車でくらいついてくる2人に瞬も楽しみを覚えていた。
(…でも。あの後ろの単車、あれは何?いつからいたの?というよりどこからついてきてるんだろう?さっき停まってた場所からかな?それとも、もっと後ろから?…いずれにしても追いついてくるまでが速い。差の詰め方がさっきから尋常じゃない。間違いなくここを目指してる。どうする?放す?待つ?こんな所に来るようじゃ、ただの走り屋だと思うけど…)
瞬は考えたがこのまま走り続けることを決めた。
『何かあった時は、あたしが2人を守る…』
(こんだけあおったんや。もうあたしの挑戦状は届いてるやろな。逃げるでも誘うでもなく、こっちの出方待ち、てとこ?)
『…よしっ!そんなら勝負や!』
咲薇はここまでかなり飛ばしてきたが一気に追いつくつもりでアクセルを握った。
『あと3コーナーで抜いたる』
咲薇はついに3番手の愛羽のすぐ後ろまでたどり着いてきた。そしてカーブで愛羽に並ぶと真横にピッタリとくっついた。
愛羽は不思議そうに咲薇の方を見てボケッとしている。
(このお嬢ちゃんホンマに暴走族なんか?)
心の中でそう思うと咲薇は愛羽に前を見ろと指を差したが、それを見て愛羽は笑顔になった。
(いや何笑てんねん!)
次のカーブで愛羽の前に出ると咲薇は前の2人を見据えた。
まず綺夜羅の後ろにはりつき抜きにかかるタイミングを見ていた。やはり勝負は次のカーブだ。
(ここや!)
咲薇は綺夜羅を抜きにかかったが、それより1歩早く綺夜羅が瞬にしかけていった。
(アカン出遅れた!ひ~、そらそーやろなー!今行かないつ行くねんて時やったもんなー!やってもーたー!)
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