第4話 ちょっと5人でケンカしに

『ねぇー?掠ー、数ー、本当に行くのー?』


 二階堂燃(にかいどうもえ)は、もう本っっっ当にめんどくさそうに蕪木掠(かぶらぎかすめ)と京極数(きょうごくかぞえ)の後を歩いている。


 燃はピンクやイエローのカラフルな髪をツインテールにしていて身なりは少しギャルっぽい感じだ。


『しょうがないでしょ燃。これは勝負なの。数が挑んできたことなんだよ?あたしはそれを受けるだけ』


 そう言ったのは掠だ。掠はほのかに茶色い髪のショートカットで前髪を髪止めのピンをいくつか使って止めている。細くて少し眠そうな目をしていて見た目はどちらかと言うと真面目そうな普通の女の子だ。


『心配するなよ。相手もたった6人じゃ速攻終わりだぜ?問題は頭の奴を掠かこのあたしのどっちがしとめるかってだけなんだ。まぁ、勝負は見えてるけどな。別にこの数様は1人でもよかったんだぜ?』


 数は緑がかったアッシュの短髪をオールバックにしていて左側の側面だけ編み込んでいる。どこからどう見ても不良にしか見えない。


『もぉー。そこで仲間割れするのやめようよー。いっつもそうなんだから。どっちが激辛100倍ラーメン食べれるかとか、どっちがボーリングで高得点出せるかとか、どっちが腕相撲強いかとかさ。あんたたち本当に女?なんでいつもそうなっちゃうの?』


 燃はもうウンザリという顔で肩を落とした。


『燃、放っときなよ。あたしたちは見に行くだけなんだからやらせとけばいいんだって』


 その後ろから雛葉旋(ひなばめぐる)が2人を止めようと必死になる燃を哀れみ声をかけた。彼女は止めても仕方がないことなど100年前から知っている、とでも言わんばかりの軽い調子でやり取りを見ていた。


『ねぇー。めぐちゃんも珠凛も見てないで止めてよー。今回は良くない気がしてるの。嫌な予感がしてるんだよー』


『おっ、ウチのエスパー燃の予言が出ちゃったよ。こりゃ本当にマズイかな?』


 旋が笑いながら言うとその横でずっと黙って見ていた赤松珠凛(あかまつじゅりん)がやっと口を開いた。


『そうね。その言葉を聞いて、いい思い出はなかったわね』


 旋はイエローというのがとても近い金髪をベリーショートにしている。それがとても似合っていてパッチリした二重も可愛らしい。


 そして珠凛はミルクティーのような色の髪を巻いていてとても雰囲気がオシャレだ。この中で1番可愛いのは珠凛で、まず何よりも大人っぽい。化粧やファッションのせいか1人だけ年上に見えてしまう。


 旋と珠凛は前の2人とは違って仲がよさそうだ。


『へっ、ビビってんじゃねーよ。ほら、もう着いちまったぜ。夜明ヶ丘高校によ』


『ま、夏休みだし学校なんて来ても人なんているとは思わないけどね』


 数と掠が校門の前で喋りながら中の様子を窺っていると中から声が聞こえてきた。


『ねぇー!玲璃ー?出てきてよー!』


 おそらくこの学校の生徒だろう。誰かを探しているようだ。


『残念。どうやら人はいるみたいだな。とりあえず聞いてみるか、暴走愛努流って奴ら知らねぇかよ…』


 2人は学校の中に入っていった。

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