第2話 姐さん

 事故を起こした少女の病院には、少女の所属する暴走族のメンバーたちが駆けつけていた。


 ニュースであった通り少女はまだ目を覚ましておらず、重い空気の中仲間たちが見守っている。


 そこに1人の女がやってきた。


『どうどすか?』


 その女は周りが普段着や極めてラフな格好で集まる中、高そうな着物に身をまとい髪は綺麗に結われ品格が溢れていた。


 しかしその顔つきは日本人のものではなく、目はとても透き通った灰色の瞳をしており、髪色も白銀というのがピッタリな色をしていて北欧を思わせる。


 だが外国人とは思えない日本語で京都の方の訛りがある。そしてとても美しい女性だ。


『姐さん…まだ目覚めません。命に別状はないという話ですけど…』


 メンバーの1人が肩を落としながら言った。

 その白銀の外国人をメンバーたちは「姐さん」と呼んでいるようだ。姐と呼ばれた女は黙って何秒か考え、すぐ答えを出した。


『…よろしい。この件はこのわたくしが片をつけます。あんたがたは1歩も動いてくれんでえぇ。全員にそう伝えなはれ。』


 鋭い目つきでそう言うと女は病室を出ていこうとした。


『姐さん!そしたらあたしらも!』


『あきまへん』


『なんでですの!?あたしらこのままじゃ…』


『引き下がらんと次の犠牲者が出るだけや。これはそこいらのケンカや抗争とは違うんどすえ?それに大勢で動いた所でこの犯人は捕まるもんやないとわたくしは見とります。事故や言うてもこれは確かな殺意や。誰か死んでからでは遅すぎる。わたくしが何かおかしなことを言うとりますか?』


 仲間たちは何も言い返せなかった。


『そんな顔しなさんな。これが姐の役目どす…』


 そう言って軽く微笑むと姐と呼ばれた女は部屋を出ていった。


 部屋を出ると白銀の髪の女は歩きだし、ものすごい形相でつぶやいた。


『絶っ対に許さんよ…白狐』

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