第22話 買い出しに行ったら厄介な従姉妹に遭遇
――俺は今、近所のスーパーに来ている。
周りを見渡せば夕方ということもあってか、広告の品とにらめっこする主婦や買い物に来た家族連れの姿が多く見える。
そんな中、今日誕生日を迎えた
何を買えばいいのか全くわからない……。
実川さんには『綾瀬くんの食べたいもの買ってきてくれればいいからさ』と言われたものの、あくまで家で待つ美少女はお金持ちのお嬢様。
今までも散々安いカップラーメンとかレトルトカレーをご馳走してきたわけなんだが、実川さんは嫌がることもせず美味しそうに食べてくれた。だからたまには少しお高くて美味しい料理を食べさせてあげたい。
俺は惣菜コーナーのコロッケを睨みつけた後頭を抱える。
コロッケは安くて美味しい、だが無茶苦茶庶民的。買って帰っても実川さんが嫌がることはないだろう。だがしかし! たまには値のある美味しい料理を食べさせてあげたい。
惣菜コーナの前でモゾモゾしながら歯を食いしばって考え込む変質者に聞き覚えのある声の女の子が話しかける。
「
俺を春兄と呼ぶこの子の名前は
里海は俺の
年齢は一つ下なのだが、見た目は銀髪低身長の顔の整った女の子だ。
「里海、前よりも大きくなったな」
「子供扱いしないでよぉ、もう」
里海はほっぺを膨らまして怒っている様子だが全く怖くない。むしろ可愛く見える。
「でも、体もまだ小さいしまだまだ子供だよ」
「春兄、最低だよー セクハラで訴えてやるぅー」
俺は『ごめん、ごめん』と誤って里海のご機嫌をとる。
「それで春兄は何してたの? お惣菜とにらめっこ?」
「うん。俺も主婦の気持ちになって惣菜と向き合ってたんだ」
「意味わかんないよぉー」
不思議そうに首を傾げるロリ銀髪美少女はこっちに近づいてきて買い物かごを覗く。
「なんでこんなに沢山飲み物が入ってるの? 春兄って一人暮らしなんだよね?」
買い物カゴには牛乳とコーヒー牛乳が二本ずつ入っていて、一人で飲む量ではない。
里海に同棲していることを言ったら親にすぐバラされそうだしなぁ……
このことが親の耳に入ればこの生活にもピリオドを打つという選択が出てきてしまうかもしれない。なので俺は里海には悪いけど同際のことは黙っておくことにした。
「それはまた友達が家に遊びにくるから買っておくんだ」
「友達って?」
「……遊矢とかかな」
「ふーん」
少し疑っているのか完全に納得している様子ではない里海。
遊矢と俺が仲のいいことは里海も知っているし里海自体も遊矢と何度か遊んだことがあるから信じてくれると思ったんだけど。
「じゃあまた里海も春兄の家に遊びに行くから」
「えっ……それはちょっと」
「ちょっと?」
ウチには実川さんが居るというのに里海を部屋に上がらせるだと……。
そんなの同棲しているのがバレるに決まっている。
それだけはなんとしても避けておきたいので俺は冷静に返答する。
「なぁ里海、男子ってのはいつオオカミになるか分からないんだぞ」
「その時は春兄のパパに言いつけるし、警察にも言うから大丈夫」
「いつの間にそんな偉くなったんだ……」
里海はニタっと笑ってから俺の背中を小さな指でゆっくりとなぞる。
それが少しこそばゆくて体が震え、力が抜けるのを感じた。
「やっぱり春兄、何か隠してるよねー。あ!、家に女の子でも連れ込んでるんだ」
「なにも隠してないよぉーん、別にやましい事なんてないやよーん」
里海の言ったことが図星すぎて語尾の呂律が回らなくなる。
「じゃあ春兄、また今度遊びに行くからね!」
「いや、来なくていいから」
俺がそう言うと里海はスキップしながらその場を去って行った。
里海が実川さんの存在を知ってしまうのも時間の問題だ……。女子ってなんでこんなにも感が鋭いんだろ。俺がわかりやすいだけなのかもしれないけど。
◆
――里海と話しているうちに時間はだいぶ経ってしまい俺は大急ぎでスーパーを出た。
惣菜も何も買わずに出てきてしまった俺は大急ぎで寿司をテイクアウトで注文する。
この日は奮発して少しお高いお寿司の詰合せを選んでみたんだけど、それは実川さんに遅くなったのを許してもらうための賄賂のようなもの。
アパートに大急ぎで走って帰ってきた俺は手ぶらのまま部屋に入りスーパーでのことを実川さんに説明した。
息切れが凄くてまともに喋れない状態でも真剣に聞いてくれる実川さんはマジで天使。
「そーなんだぁー。私も里海ちゃんに会いたい!」
「え!? それは無理だよ。完全にバレちゃうし」
「だったら私は友達ってことで紹介してくれればいいじゃんかぁー」
「うーん、でも……」
実川さんは俺の帰りが遅かったことには触れること無く何故か俺の従姉妹に興味津々。
仕方なく俺は友達という設定条件で里海と会う許可を出した。
「でも友達って紹介しても怪しまれそうだしどうしよう……」
「だったら
「でも里海のやついつ来るかもわからないしなぁ」
「だから日にちを指定すればいいんだよ!里海ちゃんも私達と会いたいんなら来てくれるでしょ?」
「そーだね、聞いてみる」
俺はRINEで里海にメッセージを送り実川さんの行ったとおりに返信した。
すると里海はあっさり承諾し実川さんや真弥さんの都合がいい10月20日に俺の家(ここ)に集まる事になった。
「はぁー。綾瀬くんの従姉妹って顔似てるのかなぁー」
「いや、全然似てないよ。髪の色まで違うし」
「ますます気になるなぁー」
ソワソワする実川さんを見て俺は不思議に思う。
だって俺の従姉妹と会うだけなのに無茶苦茶楽しみな様子だから。
―――――――――――――――――――――――――――――
「綾瀬くん……お寿司しか頼んでないの?」
「うん、ほんとにごめん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます