オンラインジャスティス
嵯峨嶋 掌
第1話
では・・・・と、MC《進行役》が厳かに言った。リアルなら“裁判長”の肩書があるが、オンライン裁判では、誰もが顔を見られるので、とくに字幕スーパーも出ない。
「・・・・では、これより、被告人側弁護士による最後の演説タイムに入ります。その前に、一言、申し上げておきます。・・・・視聴者の皆さん、これまで、厳正な法的手続きにのっとり、適正に示された証拠内容、証人の陳述、反対尋問など、被告側、検察側双方の言い分が示されました。最終的な判断は、全国の18歳以上の皆さんの、良心と見識に基づいた判断によって、
決まりきった投票前の演説に熱心に耳を傾けるのは、法曹関係者かその予備軍ぐらいだが、この日だけは投票権のない中高生もスマホの画面に見入っていた。
裁かれるのは、自分たちとほぼ同年代の少年だったからだ。いわゆる“少年A”が、被告人である。未成年の場合、画面の顔にはボカシが入るのは当然のことだ。
本篇は、評決確定二時間ほど前の、それぞれの日常における、それぞれのリアルな会話からはじまる・・・・
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