第19話
京は吹奏楽部のライブを聞きに行きたいらしい。時間も丁度良いし、大の賛成もあったのでそれにすることにした。
「楽しみだね!」
「そうだね」
普通吹奏楽部はクラシックとかのお堅い音楽を演奏することが多いが、文化祭はそういったものに興味ない人たちが多いことを考慮してか、最近流行っている音楽を演奏している。
ギターやドラムなどでは無く、金管楽器やピアノなどを使って演奏してくれる。そして歌うのは木村さん。
通常じゃ聞けない豪華バージョンの演奏に、木村さんの歌唱力も相まって去年からかなり好評だ。
どうして木村さんの歌唱力が高いのかはよく分からないけれど。
「あ、来たよ!」
待っていると、吹奏楽部が楽器を持って入場してきた。
『今年も吹奏楽部さんの協力のお陰でこうして舞台に立つことが出来ました。この日の為に練習を重ねてきたので今日はよろしくお願いします』
木村さんが若干硬い挨拶をした後、指揮者による合図で演奏が始まった。
1曲目は『林』だった。去年あたりから注目されはじめ、今では国民的人気となったアニメの主題歌だ。
女子の中でも小さい部類に入るはずの木村さんから、力強い声が発せられるというギャップに会場の皆は圧倒されていた。
それでいて繊細な歌いまわしで感情が綺麗に乗っている。
本家に勝るとも劣らない歌唱力に、会場は1曲目から大盛り上がりだ。
「流石佐紀ちゃんだね!終わったら会いに行かないと!」
京は木村さんの出待ちをする気満々なあたり、非常に楽しめているご様子。
その後、木村さん率いる吹奏楽部は『黙れ』や、『さよなら宣告』等、今年流行った曲を5曲ほど披露してライブは終了となった。
「2人はどうする?」
流石に出待ちに付き合わせるのはどうなのかと思い、2人に聞いてみた。
「京がこれだけ気にいる女の子に合わない意味はないから行くわ」
「俺はやめとくわ。話したことない男が出待ちは色々とアレだろ」
ということで、俺と京、涼野の3人で会いに行くことになった。
「佐紀ちゃーん!めちゃくちゃ良かったよー!!!!」
京は吹奏楽部の準備場所で出待ちして、出てきた木村さんに抱き着いた。
「ありがとう!来てくれたんだ!」
「そりゃあ勿論!佐紀ちゃんの歌は絶対聞かないと!」
「うれしー!!!大好き!」
非常に仲がよろしいことで。
「この子は涼野さんだよね?」
「合ってるよ。京と仲良くしてくれてありがとう」
2人は仲良く握手を交わす。これなら仲良くなれそうだ。
「今度生徒会室に遊びにきてよ。もてなすから」
「ありがとう。じゃあ今度行くね」
『まもなく本日の文化祭を終了いたします。本日のご来場、誠に有難うございました』
「あ、終わりだ」
今度の約束を取り付けたところで、今日の文化祭は終了となった。
そして翌日。
「どうする?」
「どうしよっかー」
「のんびりするか?」
午前中の1回目のシフトを終えた後文化祭を回ろうかと思ったが、昨日で回りたいところはあらかた回ってしまったのでやることが殆ど無い。
うちは文化部が少なめなので、文化祭で出し物をする部活が殆ど無い。
とりあえずクラスメイトが美味しいと言っていたお好み焼きを食べて今後のことを考えていた。
「まあメイド喫茶は疲れるし休むのもありだね」
平気そうな顔をしていた涼野だったが、疲れは結構溜まっているらしい。
普通ではありえない量の客がメイド喫茶に押し掛けているからな。正直俺もかなり疲れている。
「そうだな。少し休むか」
大も同意したので、俺たちはのんびり過ごすことに。
「バルーンアート凄かったよな」
「分かる。あんなにでかいものを作れるとは思っていなかった」
「マジックも凄かったよね」
「アレどうなってるんだろう」
という感じで、話題は基本的に文化祭の出し物についてだった。
ほぼ全てを回っていたので話題が途切れることは無く、ずっと話し続けていた。
「そろそろ戻るか」
時間になったので、戻ろうと席を立つと、
「ちょっといいかな、京さん」
見知らぬ男が京を訪ねてきた。
「誰?」
あちらは京の事をよく知っているらしいが、京の方は全く心当たりがないらしい。
「僕は西園寺仁彦。君の許嫁だよ」
「はい?」
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