第4話:『使命』?

 ついたのは歩いて五分ほどのところにある学校だった。

 学校に妖怪と言えば定番ではあるけど、昼間だとイマイチ怖さが薄れる。


「ここに妖怪がいるんですか?」


「ああ」


「明るいせいか妖気も何も感じませんけど」


「『使命』にあったんだ。いる」


 使命?

 よくわからんけどここまではっきり断言するんならいるんだろう。


「じゃあまずは依頼者に挨拶ですね。学校ですからやっぱり校長が依頼者ですか?」


 依頼者に挨拶は絶対。

 勝手に退治始めたら敷地内でなんか暴れてるやばい奴になっちゃうからね。


「今回は依頼じゃないから挨拶はいい」


 やばい奴になっちゃうじゃん……。

 依頼でもないのに退治って、なんで?


「依頼前に退治しないといけないほど強い妖怪なんですか?」


「『使命』が下ったから退治するだけだ」


 また指令。

 依頼ではなく使命。

 『使命』って何なんだ?


 考えてもわからないので直接聞いてみる。


「『使命』って何ですか?」


「退治屋『シン』が絶対に従わないといけない命令だ。連続達成数百回で次期当主になれる」


「『シン』ってゲーム感覚で当主決めてるんですね……」


 なんかもっと血で血を洗うお家騒動のごたごたをイメージしてたから意外だ。


「あれ? でも吾良様はもう百回達成してるんですよね?」


「してない。今、九十九回だ」


「ええっ、じゃあ今度正式に決定っていうのは」


「この『使命』をクリアすればの話だ」


 まだそんな不安定な状態だったのか。てっきり三月三十日を待つだけだとばかり。

 ここでもし『使命』失敗したら――、あ、なるほど、だから吾良千輝は執拗に狙われてると。


「ちなみに『使命』ってどんな内容なんですか?」


「――なんでそんなことを聞く」


 お?

 なんかピリッとした険悪な雰囲気になったぞ。


 聞いちゃいけないことだったのかな。怒らせたいわけじゃないし素直に答えておこう。


「吾良様を守りつつ、吾良様の指令の手伝いをすればさらに名前を憶えてもらえるかなって。未来の『シン』の当主様にいい所見せて、依頼を回してもらえるようにと思って聞きました。――吾良様が言いたくないというのなら聞きません」


 丸々全部暴露する。


 嘘偽りない言葉が良かったのか、吾良千輝の雰囲気が少し柔らかくなった。


「『使命』は、そう簡単に人に話すものじゃない。『使命』の内容を知りたがるのは敵だけだ」


 どうやらもう怒ってなさそう。

 ちょっと安心。


「ではもう聞きません。私は吾良様の味方です」


 信頼第一。

 吾良千輝は特に何も言わず、


「……行くぞ」


 とだけ答えた。

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