わたし

バブみ道日丿宮組

お題:忘れたいホテル 制限時間:15分

わたし

 心霊スポット巡りが趣味の友だちに付き合うとなぜか私ばかりに霊が入ってくる。

 そのおかげで私は霊との境目が限りなく近くなったって神社の人がいってた。

 そして、最後には私は神社の巫女として祀られることになった。


 それはーーあのホテルのせいだ。


 忘れたくても忘れられない思い出。

 私と友だちの最後の記憶。

 明日があるって信じてた日。

「どうしましたか?」

「なんでもないです」

 監視役の人は感情のない機械のよう。なんでもしてくれるけど、私を神社の外には出してはくれない。家族にも友だちにもあえない。

 私が……傷つけて壊してしまった友だちに直接謝ることもできない。


 ーーあたしのせいでごめんね。


 友だちからきた最初の手紙にはそんなことが書いてあった。

 私は、私は……なんて返答すればいいのかわからなかった。

 私があのホテルで入り込んだ霊の力で彼女を死ぬ間際まで追い込んで、街にまで危機を、怪異現象を起こした。

 色んな人に迷惑をかけた。

 怪我人が多く出た。

 それでも、私は誰にも怒られなかった。処罰されなかった。

 特別待遇。

 私は知らなかっただけで、特殊な体質……神様もおろすことができる巫女の先祖返りだったみたいだ。

 忘れたいのにここにいる限り、あのホテルでの出来事は忘れられない。

 ただ記憶の隅において、

「……新しいぬいぐるみは入荷できましたか?」

 気をそらすしかない。

「はい、先程配達中との連絡を受けたので検査の後お渡しできると思います」

「そうですか」

 会話は基本この形。一方通行。唯一監視役の人が声をかけるときは、お風呂の時、ご飯の時、儀式の時、祈りの時……お役目がある時だけだ。

「……」

 大統領にも天皇様にも会った。

 みんな笑顔だった。

 

 ーーあなたのおかげで国が救われる。


 そんなことを言われた。

 でも、私はわからない。

 神様がおりてる時、私には感情はない。

 何が神様が行ってるのか、行ったのかわからない。

 国の状態も言葉だけで具体的に何が起きてるのかわからない。

 神社にある私の部屋にはネット回線がひかれてないパソコンと電子書籍がかえる端末があるだけ。あとは私の好きな週刊誌を持ち込んでくれるくらい。

「今日は特別なことを行います。それであなたに異変が起こるかもしれません」

「そうですか」

 そういえば神様がおりる日か、今日は。一体神様は私の身体を使って何をしてるのだろうか。

 良くなることをしてくれてるといいな。

 私があの街にもたらした災害を消してくれるような何かが欲しい。


 そして与えられたのは、新しい生命の誕生を知ることだった。

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わたし バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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